財務省が5日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で示した試算によると、デフレが始まった98年度を起点に、07年度までの人件費(人事院勧告)と物件費(消費者物価指数)の推移をみたところ、人件費と物件費の加重平均は4.4%減になった。一方、薬価改定を除いた診療報酬本体は0.8%減にとどまっており、財務省は「近年の賃金や物価の下落を十分反映できておらず、引き下げの余地はある」と求めた。
財政審で異論はなく、今月下旬にまとめる建議(意見書)に盛り込む。国民医療費(患者負担含む)は06年度は約33兆円で、25年度には56兆円に増加する見通しだ。医師などの人件費はそのうち約5割を占めている。
日本医師会は10月30日、地域医療支援や医療安全対策、医療の質確保の費用として5.7%の診療報酬引き上げを求めた要望書をまとめており、今回の財務省の方針に対する反発が予想される。診療報酬は1%引き下げると医療費ベースで約800億円の削減につながり、前回の06年度改定では過去最大の3.16%引き下げた。次は08年度が改定期となる。
医療分野では医師不足など深刻な問題も多く、財務省は、診療報酬は引き下げるが、今年5月末にまとめた政府・与党合意の「緊急医師確保対策」に基づき、地方に必要な医師の確保などは行う方針だ。【須佐美玲子】