◎航空路線自由化 台湾の次はタイ便でスクラム
国土交通省が地方空港への外国航空会社の乗り入れを原則として自由化することを決め
た。これは事実上、航空会社の届け出で路線開設が可能になることを意味し、国際便誘致をめぐる空港間の競争は一層激しくなるだろう。日本と台湾の民間協会間で小松空港への台湾便乗り入れが合意に達したが、タイ便の実現へ向けても官民が強力なスクラムを組み、自由化の波に乗り遅れないようにしたい。
地方空港の路線自由化は、政府が五月にアジアとの交流拡大を目指してまとめた「アジ
ア・ゲートウェイ構想」に沿った措置である。地方空港の国際便の大半は外国の航空会社が乗り入れ、すでに自由化しているとの見方もあるが、今後は二国間航空交渉の妥結を待たずに航空会社が需要に応じて路線や便数が柔軟に設定できる。アジアとの航空ネットワークの中で地方空港の拠点化が進むとみられ、これからは特定の航空会社に的を絞った働きかけやチャーター便の運航戦略が求められよう。
小松空港では台湾の航空会社が週四便を上限に路線を開設することが可能となり、今後
、台湾当局が航空会社を決める。開設時期は未定だが、定期便就航へひと山越えたとみていいだろう。
石川県はソウル、上海、台湾に続く国際定期便としてタイに照準を定め、小松空港では
先月、バンコク間で初の双方向チャーター便が就航した。訪タイした県議会議員連盟に対し、タイ政府は今月中に予定される日タイ間の航空交渉で、小松便を議題として取り上げる意向を示したが、楽観は禁物である。
タイとの定期便は成田、関西、中部、福岡、広島の五路線があり、仙台、新千歳は発着
枠を確保しながら路線開設には至っていない。仙台、福島、山形三市はバンコクで共同物産展を企画したり、観光セミナーを開催するなど南東北の広域連携で売り込みを図っている。それに比べれば、小松空港誘致の取り組みは緒に就いたばかりである。
北陸では中国の経営リスクを回避するため、ベトナムとともにタイへ進出する企業が相
次いでいる。石川県がタイ便へ本腰を入れて取り組むなら、富山、福井県にも協力を呼びかけ、北陸全体でスクラムを組める体制づくりが必要となろう。
◎加賀野菜復興へ 「金澤料理」も広めたい
金沢市が運営する金沢農業大学校の初の修了生が来春から地域ブランドの「加賀野菜」
づくりに取り組むことになったという。第一期生は十人で、うち七人が加賀野菜栽培を決め、残り三人もまだ決心には至らないが、意欲を見せているそうだ。人材不足の加賀野菜を振興させる新たな戦力として期待したい。
再来年の春に巣立つ二期生は一期生より多くて十五人である。研修生に第二の人生を野
菜づくりにかける企業のリタイア組もいて、才能も多彩で研究熱心だというところが得難いところである。
加賀野菜といってもおもに金沢で生産され、「金澤料理」にも生かされている。金沢の
郷土料理研究家、青木悦子さんによって加賀野菜などの「じわもん」の利用の伝統に新たな創意が加えられて誕生した味と、伝統的な味とが共存するのが金澤料理だから加賀野菜の振興を金澤料理の普及にも結びつけていきたい。
加賀野菜の地域ブランド化戦略が始まって十年になる。後から追加されたものもあって
全部で十五品目に達した。この間、市農業センターをはじめとして加賀野菜に積極的に関心を寄せる市内の料理学校や、いくつかの料亭などにより食べ方が工夫され、青果物を取り扱う業者に対する啓発活動などが行われてきた。首都圏での販路開拓にも努めてきた。人工的に栽培しやすくした「F1(雑種第一世代)」と呼ばれる一般の野菜は価格が右肩下がりだが、加賀野菜のそれは逆にやや右肩上がりで売り上げが約十三億円にまでのびた。地域ブランドとして定着してきたのである。
野菜づくりは「技術一割、自然の力九割」といわれることがある。風雨その他の自然の
力に大きく左右されるからだが、その一割の技術は稲作の技術以上に高度だ。とりわけ、伝統の上に立つ加賀野菜づくりは、F1に比べて難しい技術を要し、研修生たちは市が指定する十一人の「農の匠」から伝統野菜の栽培方法を学ぶ。担い手が就農するとき、市は農地の借り上げ、基盤整備、土壌改良、ハウスや収納庫などの生産設備、農業機械の導入に対して全額あるいは二分の一を補助する。新しい戦力への期待が膨らむ。