よほど印象が強かったのだろう。話は「どぶ板選挙」から始まる。昨日、民主党代表辞任を表明した小沢一郎氏が政治論をまとめた自著「小沢主義」だ。
二十七歳で初当選しオヤジと呼ぶ田中角栄氏から「選挙は川上から」を学ぶ。人口密度の低い農村部から歩き始め、都市部は後回し。その手法は三十数年後の今夏の参院選でも踏襲、民主党を大勝利に導いた。
そして「ねじれ国会」。安倍晋三前首相は衆参両院で第一党が異なる政権運営の難しさに音を上げ突如、辞任した。だが、福田康夫首相は野党のパンチを封じる「クリンチ(抱きつき防御)作戦」に出た。
意外にもこの作戦が奏功し小沢氏は昨日、尻もちをつき、あおむけに倒れてしまった。二日の党首再会談で首相から「大連立」を持ち掛けられ、これを党役員会に諮ったが認められず「不信任を突き付けられた」と辞任表明してしまったのだ。
前方をにらみ、口を真一文字に結んだ小沢氏の大写真。表紙をめくると「今こそ、まともな政治を」「国民の生活が第一」に続き「私は必ず実行します」の文字が躍る。今夏の政権公約が早くも裏切られそうだ。
同党は今日、辞職願の扱いなどを協議するが、今後の政局から目が離せなくなった。同氏の自著の一節「国民一人一人が主権者として、政治に問題意識を持つことが重要」は図らずも名文句となった。