ナレッジマネジメントの「コロンブスの卵」
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
社員一人ひとりが持つ知識や情報を企業全体で共有し、
有効活用ができるような仕組みを
「ナレッジマネジメント」
と呼びます。
この「社内情報の共有」が
とりわけ有効なのは、営業現場ですね。
あるクライアントでうまくいった提案(成功事例)や
競合情報などを営業担当者間で共有し、横展開を図ることで、
全社的な営業活動を成果につなげやすくなるからです。
ですから、近年、
営業現場のナレッジマネジメントを推進するため、
単に営業活動の進捗状況等を管理するだけでなく、
営業活動を通じて得られた情報を入力・共有できる機能も備えた
「営業支援システム」(SFA:Sales Force Automation)
の導入が盛んです。
ただ、こうしたITシステムの導入は比較的簡単ですが、
運用(定着)はとても難しい。
というのも、一日外回りで忙しい営業マンにとって、
自分が持っている情報を自分で入力するのは、
実に面倒なこと。
営業日報の作成だけでもけっこう面倒なのに、
それ以外にこまごまと情報を入力する時間なんか取れないよ
ということで、なかなかうまくいかないのです。
実は、カルビーも、
当初導入した営業支援システムでこの問題に直面しました。
同社の約250人いる営業担当者は、
1人あたり約40店舗を担当、情報収集をしています。
彼らは、
・棚の品揃え
・同社商品がお客様とどう受け入れられているのか、
・小売店が同社に対してどう思っているのか
などの情報をシステムを通じて全社で共有できるように
しています。
当初は、営業担当者が帰宅後、
自宅のパソコンから情報を入力する仕組みとしていました。
ところが、それだと1時間も2時間もかかってしまう。
同社の営業担当者は、主婦が多いそうですが、
この仕組みだと、ご主人や子供の世話をする時間が
なくなってしまうと苦情が殺到したそうです。
そこで、解決策として、
同社は、携帯電話を活用することにしました。
具体的には、
携帯電話を使って商品のバーコードを読み取り、
商品情報を取り込めるようにしたのです。
こうすることで、店舗の品揃え情報の収集を
簡単にしたわけです。
もうひとつは、営業担当者がお店で気づいたこと、
お店の人から聞いたこと、お客さまから聞いたことなどを
自分で入力するのではなく、コールセンターに電話して、
コールセンター側で入力するようにしました。
なるほど、
言われてみればそんなやりかたもあったなあ!
と思いませんか?
私が、同社のこの話を初めて聞いたのは
数年前のことでしたが、その時は、
「コロンブスの卵」
的なアイディアだなあと感心したものです。
よく考えてみれば、
営業担当者自身が情報を入力しなければならない
必然性はありません。
カルビーのように、
コールセンターのオペレータとの連携プレーで情報を
蓄積すれば運用が円滑になりますよね。
実際、この仕組みに変えたおかげで、
どんどん情報が集まるようになり、
営業担当者の家庭も円満になったそうです。
さらに興味深いのが、
この仕組みには、思いもしなかった別のおまけが
ついてきたことです。
コールセンターの入力担当者は、
日々、営業から寄せられた情報をシステムに
入力しています。
この時、入力担当者の頭の中にも、
それらの情報が入るわけです。
すると、コールセンターの担当者自身も、
営業情報の中に新たな発見や気づきを得るようになった。
つまり、
「ナレッジの創造」
が、営業とコールセンターの情報のやりとりを
通じて起きるようになったのです。
参考情報:NBonline IT経営問答
*「馬鈴薯の底力」をイノベーションで引き出す
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20071015/137448/?P=1
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