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小沢・民主代表:辞意表明 奇計が生む国民の悲劇=政治部長・小松浩

 次の総選挙での政権交代に政治生命を賭けると言いながら、ひそかに大連立に走り、独り相撲で挫折した小沢一郎民主党代表。その言行不一致ぶりには、参院選で「私と小沢さんと、どちらをとるか」と大見えを切って敗北しながら居座った、安倍晋三前首相の姿が重なる。与野党リーダーの言葉のあまりの軽さに、有権者は2度裏切られたことになる。

 小沢氏は辞意表明会見で、総選挙で勝つのが難しいから政権の一翼を担い、国民に約束した政策を実行したかったと説明した。ここには論理のすり替えがある。

 総選挙を経ない大連立は政治家が権力を手にする「近道」にすぎず、国民が思い描く自民、民主両党のビジョン競争とは対極のものだ。2大政党が相違を克服しながら粘り強く合意を目指すことからしか、政権交代可能な成熟した政治風土は育たないだろう。

 権力を行使する側の論理だけで大連立が語られることに、日本の政党政治の不毛を見る。

 参院「民主党支配」がこれから何年も続くというくびきがあるにせよ、福田康夫首相もまず有権者の審判を経たうえで、大連立話を進めるべきだった。せっかく芽生えつつある「政権選択」選挙への期待を、こらえ性のない政局的妥協で消し去るべきではない。

 ◇あるはずもない「情報垂れ流し」

 我々メディアにとって今回の大連立協議の真相をやぶの中で終わらせることは、読者に不誠実な態度である。毎日新聞は両者の関係者の取材を踏まえ、国際貢献の恒久法を巡る福田、小沢両氏の合意などを正確に報じてきた。とりわけ「小沢首謀説」にかかわる記事は、情報源を明示し、双方の言い分を掲載している。「情報垂れ流し」や「世論操作」の意図が、あるはずもない。政治史に残る動きを、さまざまな情報を基に積極的に伝えるのは、報道機関の当然の責務と考える。

 小沢氏はメディア報道に事寄せて反論した。そこに、権力ゲームを長年にわたって続けてきた小沢氏の、政治家としての限界を垣間見る。

 奇計・奇略による合従連衡劇は、有権者に政治への無力感を植えつけるか、再びかつての乱暴な劇場型政治に引き戻すことになりかねない。それは政治の喜劇、国民の悲劇ではないか。

毎日新聞 2007年11月5日 東京朝刊

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