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2007年11月05日 06時00分00秒

第301話「綻びXV」

テーマ:女子高校生恋愛記

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ブログではもう読めない期間限定テキスト他、
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登場人物紹介



BGM(推奨)



。・。・゜★・。・。☆・゜・。・゜




その後の勉強は…


当然と言えば当然なんだけど…


俺も静香も余計なことは何一つ口にすることなく、
こんな例だしてアレなんだけど、
まるでお通夜みたいな…

ホントにそれぐらい暗い雰囲気で
淡々と授業が行われたわけで…



俺の喋ったセリフと言えば…


「じゃ、次は大問の3をやってくれる?」


という指示が基本。それ以外には…


「これは…こうこうがこうで、
それで次にこれをここに当てはめると…」


説明すらも形式ばって
解答集に掲載された式をそのまま口にする、といった
なんの面白みも工夫もない授業を展開し、

それに対して静香も、
ただ、「はい…」と同じ言葉を繰り返すだけ。

ホントに理解できてるのか、そうじゃないのか、
彼女がなにを考えているのか、
俺にはさっぱり読み取ることが出来なかった。


いつもの静香なら、

「え~、よく分かんな~い。
もう一回説明して~♪」


って甘えてくるのが大半だったから、

「はい…」としか言わないあまりにも物分りのいい静香に
違和感を感じまくりだった。



明らかに、俺たちの関係は…

いつもの俺たちじゃなくなっていた。






そして、お昼がきて、
俺たちはお昼ご飯に呼ばれたんだけど…

ここでも異様な空気に包まれる。



何も知らないお母様は、
俺たちにいろんな会話を振ってきて、

静香も俺も出来る限り普通を装って
笑いながら答えるわけなんだけど、

やっぱり当事者にしてみると、
もう一人の当事者の言動が妙にぎこちなく思え、

あ…無理してるな…

痛いほど伝わってくる。


当然、静香から見たら、俺の発言なんかも
無理してることがマル分かりなんだろうけどね…





その後、夕方まで勉強して、
いつも以上のハイペースで予定のところまで
アッサリ終わってしまったのも…

無駄話が一切なかったということに
他ならないわけで…


これが一番勉強がはかどる環境かと思うと、
なんとも言えない気持ちデス…














「…終わったけどどうする?」



キリのいいところで静香に聞いてみる。


本当なら…

久しぶりに会ったわけだし、

「ちょっと出かけるか?」

なんてプチデートって可能性もあったかもしれない。


もちろん今のこんな状況で、
そんなことを期待して言ったわけじゃない。

ただ、俺としてはさ、
『ベクトル』ばっかり勉強するのもいい加減疲れてきたし、
せっかくキリのいいところで終わったんだから
気分転換に『行列』なり『関数』なり違う分野に変えないか?

という意味で聞いたわけなんだけど…









「う~ん。じゃあ、英語の勉強する」


そう言ったかと思うと、
さっきまで解いていた数学のテキスト等を閉じ、
今度は本棚の中から英語関係の書籍を取り出した。





「英語は…俺、教えられないけど…」



「大丈夫。一人でやるから」



「そう…」





それ以上、口を開くことなく、
黙々と英語の勉強を始めた静香を前に、
何も言えなかった。





「なんだよ。お前らしくねぇじゃん。
なに真面目ぶってんだよぉ(笑)
いつもならすぐにサボりたがるくせにさ」


そう言って静香の頭をグチャグチャに掻き混ぜると、

「もう、せんせぇのバカァ。
やめてよぉ」


なんて言いながらポカポカ俺の胸を叩く静香。
笑っているうちにじゃれあっていく…

そんなシーンが頭に浮かんだ気がした…。

いや、気がした瞬間、
すぐにそんな妄想をかき消す。



ちっ、バカバカしい…

心の中の呟き。







しばらく…

2~3分ほど静香のペンを走らせる姿を
漠然と眺めていたんだけど、


なんかだんだんと…


この場所にいることにいたたまれなくなってきてさ…




だってさ、もう完全に用済みの俺がだよ?
こんなところでぼ~っとしてて何になるんだよ…


話すこともない。

質問されることもない。


だったら…

だったら俺がここにいる理由なんてなにもないじゃないか…









「俺、帰るよ…」



自分のカバンに手帳やペンをしまいながら立ち上がった。

すると、ここで初めて…

ホントに初めて彼女が反応を示した―――



「ご、ご飯は?
夕食は…食べていかないの?」



オドオドしながら聞いてくる。


普段は、ゴルフなり休日出勤なりに
出かけているお父様のお帰りを待って、
一緒に夕食をさせてもらうのが慣わしになってたから、
多分、それを気にしているんだろう。





「あぁ…。夕食かぁ…
そうだなぁ、お父さんに挨拶したいのは山々なんだけど、
まだ夏期講習中だし、明日からの予習もしたいからさ。
今日は早く帰るわ…
お母さんに俺から事情説明しておくよ」






予習なんて…



とっくのとうに済ませているくせに…







「そう…。分かった…」



静香は俺が期待するような反応を見せることもなく、
淡々と答えた。


部屋を出ようとした俺を、
なんか…

何か言いたそうな表情で見送る静香。

少しだけ悲しそうに見えた気がしたのは、
俺の願望なんだろうか…






ドアノブに手をかけたとき、



「あ…」



やっぱ…

聞いておかなきゃまずいよな…


立ち止まり、振り返ると、
彼女と目があう。

静香は…

ちょっと気まずそうな顔をする。





「家庭教師…のことこなんだけど…
えっと…俺さ…まだ来たほうがいい…?」



「え?」



「い、いや…
別に意味はないんだけど…
一人で勉強したほうが効率いいんならさ、
やめたほうがいいのかなぁ、って思って。
ほら、家庭教師ってただじゃないし。
だからどうなのかなぁって思って…」






俺は…


このとき何を考えてこんなことを言ったのだろう…







もう…

静香と完全に縁を切りたかった…?



それとも…

こう言うことで、強引に静香の気持ちを揺れ動かして、
なんらかの俺の期待する反応を導きたかった…?





静香は一瞬絶句したあと、
俺に見せたのは…









悲しげな瞳。



気のせいなんかじゃない。

間違いなく、
彼女の瞳は底無しの悲しみの色を浮かべていた。















あ…












その瞳を見たとき、
何か言わなきゃって思わずにはいられなくて…



なにか言おうとして…

言おうとしたんだけど…



言えなかった。

彼女の瞳に見つめられると、
何も口にすることが出来なかった。




数秒の沈黙のあと、
俺のそんな思いなど見透かしたように彼女が言った。





「家庭教師は…
せんせぇが来たくなかったら、もういいよ…
これ以上無理させるのも悪いし」




「い、いや、お、俺はさ…」












言いかけて…


























「…そっか…


…分かった…」



トップギアで駆け抜けようとしている
この流れの勢いを弱めることなど、
もはや不可能だということを…

今さらのように痛感する。





もしかして…


悔やんでるのか、俺は…?




自分が望んだことじゃないか…


必死に謝る静香を撥ねつけて、
こんな展開を導いたのは、

自分自身じゃないか。


何を悔やむ必要があるんだよ…









「そっか。じゃあ…
また近いうちご両親とも話をしてみるよ。
まぁ、いきなり辞めますってのも勝手すぎるし、
あとしばらくは通わせてもらうかもしれないけど、
その間は悪いけど我慢してくれるか?」





なんて…



嫌味くさい言い方なんだろう…






「あ、たださ…
夏期講習中はどっちみちあまり来られないと思う。
次は来れてお盆の時期…かな?
もしなんか用事あったら連絡くれるか?」



「分かった…」



素っ気無く答える静香。



「………」



それ以上、会話を続ける術なんてなかった。



再び踵を返し、ドアを開けると、
一言、「じゃあな…」と残して廊下に出たんだけど…

俺の耳に、彼女の声が届くことは無かった。














1階で、今日は早退することを告げると、


「あら~、今日は焼肉の予定でしたのに。
夏期講習大変だし、
ヒカルさんに栄養つけてもらおうと思ってたのに」



お母様は残念そうな声を出す。



俺なんかのために、気を遣ってくださって、
本当にありがたいと思う。


お礼と謝罪の言葉を述べたあとで、
お父様にもよろしくお伝えくださるように告げ、

小川家を後にした。












歩き始めて、曲がり角のところで、
一度立ち止まって振り返ると、

2階の窓のところに誰かいて、
立ち止まった俺に気付いたのだろう。

さっとカーテンが閉まる。


まだ日も出ていたから、絶対に勘違いなんかじゃない。

間違いなく誰かが俺の後姿を見ていた。















今なら…








今ならまだやり直せるかもしれない…














咄嗟的にポケットから携帯を取り出して、
静香に電話しようとして…


彼女の電話番号はすでに表示されていて、
あとは発信ボタンを押すだけ…だった…































せんせぇが私のこと言えるの?







































この言葉が頭を過ぎった瞬間、
携帯をパタンと閉じていた。











やっぱり…





無理だ…










携帯を無造作にズボンのポケットにしまいこむと、
ふたたび駅に向かって歩き始めた。














そして…





それ日以来、今まで毎日届いていた
静香からのメールもしくは電話は…

















バッタリと途絶えることになる。













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【問題】
次回よりいよいよ、新章突入です。
24時間についてですが…



コメント

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■無題

悲しくて切ないです。これで終わりじゃないと信じたいです。

■ん~(-.-;)

二人共、凄いムリしとるのが伝わってきて…切ないですねぇ(´~`;)
なんか変に意地はってるというか…。
しょーがないのかもしれないけど、やっぱりここで終わって欲しくない…。


あと、更新お疲れ様です(^O^)/

■先生から謝りにはいかないほうがいいよ

一番謝罪しなきゃならないのはしずかのほうなんだからさ(-_-)
本当子供って・・・・・・(´・ω・`)

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