プロナードには、トヨタ「クラウン」や「セルシオ」のような、過剰ともいえるクオリティの高さと装備は備わらないが、それ以上に価値のある広い室内空間がある。空間的な広さというと、現代の日本ではミニバンが真っ先に挙げられるだろう。けれども、4ドアセダンの広大な車内空間がもつ気持ちよさは、“伝統的な自動車の価値観”にもとずくもの。ミニバンのそれは“日常的な部屋や家の延長”に近いため、おのずと質が異なる。セダンの“よそ行きっぽい感じ”が心地良い、といったらご理解いただけるでしょうか。セダンにも、ミニバンより上質で広い空間を持ったクルマがあることを、憶えておいて欲しい。ミニバンが圧倒的に有利な日本市場では例外的な存在だし、メーカーもそれほど販売に力を入れているようには見えないが、試しに乗ってみる価値は大アリだ。
ところで、プロナードは一見すると、取っつきにくいヘンなカッコをしている。しかし、見慣れると妙な味のようなものがあって後を引く。個人的には、この“ヘンさ加減”(もちろんスタイリングのみ。それもボディ側面にしめるグリーンハウスの割合と、窓ガラスの立ち具合あたり)が、チェコ・スロバキア時代には乗用車も生産し、現在はトラックのみをつくる自動車メーカー「タトラ」の「613」に通じるものがあるような気がするが、エンスーに過ぎるだろうか。
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