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トヨタ・プロナード3.0“Gパッケージ”(4AT)
……378.0万円
総合評価……★★★★

【スペック】全長×全幅×全高=4885×1820×1460mm/ホイールベース=2720mm/車両重量=1520kg/駆動方式=FF/3リッターV6DOHC24バルブ(215ps/5800rpm、30.5kgm/4400rpm)/車両本体価格=375.0万円(テスト車=378.0万円)
 

タトラ「613」。写真は1978年のもの。
■ミニバンにはない広さ

トヨタのアメリカ工場で製造される大型セダン。全長×全幅×全高=4885×1820×1460mm、ホイールベース2720mmボディサイズは、日本においては絶対的に大きい。特に都市部では、取りまわしに神経を遣う場面も少なくないだろうが、小さなクルマでは得られない“空間的な余裕”は何ものにも代え難い。

プロナードには、トヨタ「クラウン」や「セルシオ」のような、過剰ともいえるクオリティの高さと装備は備わらないが、それ以上に価値のある広い室内空間がある。空間的な広さというと、現代の日本ではミニバンが真っ先に挙げられるだろう。けれども、4ドアセダンの広大な車内空間がもつ気持ちよさは、“伝統的な自動車の価値観”にもとずくもの。ミニバンのそれは“日常的な部屋や家の延長”に近いため、おのずと質が異なる。セダンの“よそ行きっぽい感じ”が心地良い、といったらご理解いただけるでしょうか。セダンにも、ミニバンより上質で広い空間を持ったクルマがあることを、憶えておいて欲しい。ミニバンが圧倒的に有利な日本市場では例外的な存在だし、メーカーもそれほど販売に力を入れているようには見えないが、試しに乗ってみる価値は大アリだ。

ところで、プロナードは一見すると、取っつきにくいヘンなカッコをしている。しかし、見慣れると妙な味のようなものがあって後を引く。個人的には、この“ヘンさ加減”(もちろんスタイリングのみ。それもボディ側面にしめるグリーンハウスの割合と、窓ガラスの立ち具合あたり)が、チェコ・スロバキア時代には乗用車も生産し、現在はトラックのみをつくる自動車メーカー「タトラ」の「613」に通じるものがあるような気がするが、エンスーに過ぎるだろうか。

■【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
1995年発売の「アバロン」の後継モデルとして、2000年4月にデビューした北米トヨタのフラッグシップ4ドアセダン。トヨタと米国TTC(トヨタテクニカルセンター)が開発、TMMK(トヨタモーターマニュファクチャリング・ケンタッキー)が生産する。FFのパッケージを生かし、身長185センチの人が乗っても充分なヘッドクリアランス(前席で50mm、後席で25mm)や、ゴルフバック4個と中型スポーツバックが4個入る、562リッター(VDA方式)のトランク容量など、広さがジマン。

パワートレインは、3リッターV6DOHC24バルブ(215ps/5800rpm、30.5kgm/4400rpm)に、電子制御4段AT「ECT-iE」の組み合わせのみ。全車EBD付きABSとブレーキアシストや、車両安定性を高めるVSC、トラクションコントロールなどの電子デバイスを装備する。さらに前席エアバッグはもちろん、サイドエアバッグ、前後席ELR付きシートベルトなど安全装備も充実する。


(グレード概要)
全グレードにわたって充実した装備がウリのプロナードだが、最上級グレード“Gパッケージ”は豪華さが加わる。エクステリアは、“Gパッケージ”のみタイヤサイズが1インチ大きい、「205/60R16」タイヤを装着。インテリアは、ステアリングホイールとシフトノブに木目調を採用。シートは本革で、運転席は8WAY(助手席は6WAY)の電動調節機構付き。前席にはシートヒーターも備わる。オーディオは、JBL製スピーカー+アンプとなる。
機構面では、ダンパーの減衰力を自動制御する「スカイフックTEMS」、車速に応じて油圧バルブの特性を切り替えてステアリングの重さを最適に制御する「新PPS(プログレッシブパワーステアリング)」など、盛り沢山だ。

■【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★
メーターがトヨタ自慢の発光式“オプティトロン”なのに、それらしく見えないのが不思議だ。普通の白文字盤を裏からライトで透かすかのように、鈍くしか見えない。他のトヨタ車のオプティトロン搭載車は、もっとハッキリクッキリ見える。特にスピードメーターとタコメーターは、クルマのインテリアにおける“眼”のようなものだから、もっとシャキッとしていた方がいい。これだけで大幅に損をしている。なお、オーディオや左右独立式オートエアコンなど、必要な快適装備はほとんど装着される。

(前席)……★★★★
1820mmの全幅で稼いだ空間は広大。プロナードの前席は、ある程度の空間の確保が、乗員の快適性に欠かせないものであることを証明している。シートも前後左右の寸法がタップリしており、どんな体格の人でも不満はないだろう。大きなシートだから、運転中のドライバーの取る姿勢への許容範囲も大きく、いい意味でリラックスして座れる。かつてのアメリカ車のように、クッションが薄くてペナペナのシートではなく、かけ心地は悪くない。


(後席)……★★★
絶対的には、世の中のほとんどの4ドアセダンよりも広大な空間が確保される。寸法上もプロナードは大きなクルマだが、サイドウインドが“立って”いるので、余計に広く感じるのだろう。シートのかけ心地も上々で、前席同様にリラックスして過ごせる。ただし、路面からの突き上げをストレートに伝える傾向があり、乗り心地が前席よりも少々劣る。


(荷室)……★★★
ボディが大きく、「ゴルフバッグなら4セットが“余裕で”入る」と謳われる荷室。日本で普通に使うなら、サイズに不満を憶えるようなことはないだろう。荷物のズレを防ぐカーゴネットや、室内から荷物を取り出せるトランクスルー機能などが備わり、実用性は高い。床面最大幅165cm、奥行き115cm、高さは55cmだ。

■■本文内のタイトルは太文字

(エンジン+トランスミッション)
……★★★
ガスペダルをほんの少し踏み込んだだけで、巨体をワッと引っ張るだけのトルクがある。これはこれで痛快だが、もう少し節度を持たせた方がいい。ジワッと発進させないと、大きなクルマは疲れるからだ。3500rpmあたりを超えると、“ファーン”というノイズが高まるが、運転している実感を伴う種類のもので、不快ではない。

(乗り心地+ハンドリング)……★★★
可変ダンピングコントロール「スカイフックTEMS」を“ソフト”にすると、ボヨンボヨンと上下に大きく揺れる。「今どき、アメ車だってこんなには柔らかくはないだろう」というくらいの上下動だ。プロナードは、アメ車だが。ダンパーコントロールノブを、その正反対の“スポーツ”に合わせると、当たり前かもしれないがピシッと締まる。したがって、日常的なベストポジションは、“ソフト”と“スポーツ”の中間位置だ。

(写真=郡大二郎)

■【テストデータ】

報告者:金子浩久
テスト日:2002年10月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:830km
タイヤ:(前)205/60R16 92H(後)同じ(いずれもMicheline MX G S2
オプション装備:スーパーホワイトパールマイカ(3.0万円)
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:394km
使用燃料:51.0リッター
参考燃費:7.8リッター/km

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