会社から電話が入った。
私は電話に出る事はしなかった。
会社はもう解雇扱いになっているようだった
私物の引き取りと保険証の返却を求める内容の留守電
とうとう 全てなくなってしまった。
私に 残された物は何も無い
Mの実家に電話しようか迷っていた。
Mの母親は持病であまり思うように動けない。
それを父親が世話したりカバーして生活しているようだった。
Mが休暇を取って家に来るという話を
Mは事前に親に話したらしい。
仕事を休んでまで面倒を見るという息子に
Mの母親はこう言ったらしい
母さんだって何にも出来ない・・・
そんな母さんをほっといてそれでも行くのか?
母さんには父さんがいるだろう
Kには誰もいないんだ・・・
だから俺が行かないとならないんだ
Mはそう言って私の所に来たらしい。
ただ・・・その決心もあっさりと終わった。
それから連絡が取れなくなった息子
Mの両親も私のせいだと思っているだろう。
それでも山ちゃんに自分で電話すると言った手前
電話をしてみる事にした。
冷たい態度だった。
「本人と連絡が取れていないからわからない」
そうあしらわれた
私はそれ以上何も言えなかった。
でも、弁護士が契約解除した事は知らなかったようだった。
私は何処でも悪者だ
やっぱり 私が全て悪いのだ
だから こんな事になっているんだ
実家に電話した事を
山ちゃんと潤ちゃん、H子ちゃんにメールで伝えた。
山ちゃんからも潤ちゃんからも連絡はなかった。
H子ちゃんからもここ数日連絡が無かったが
「今後の事をきちんと考えて行動したほうがいい」
そう返事が来ただけだった。
メールでは相手の様子は解らないけど
H子ちゃんのメールは
どことなく冷たい感じがした。
今まで協力してくれていた人達からも
私は見放されたのだろうか・・・・
なんで こんな事になったんだろう??
私が悪いのか??
私がゴミだからなのだろうか?
また自分を責めて追い込む
物凄い孤独感に苛まれた。
もう 外に出て人として生活していくのは無理なんだ
それより なにより・・・
生活なんか出来ないのだから
何も残されていない
なのに なんでまだ生きているんだろう?
どうして 息してるんだろう?
この日も眠れない私は
深夜にPCを起動させた。
ネットサーフィンをしていると
相談チャットを見つけた。
人が少ないオープンチャットに入る。
そこでYOUに出会った
私の話をちやんと聞いてくれた
心配もしてくれた
「こんなに心が疲れているのに・・・
本当は何も考えちゃいけないのに・・・
なんで一人でそんなに抱え込んでいるの?
今 Kに一番必要なのは
安心して眠る事・・・なのに」
そう言ってくれた
気持ちは癒されなかったけど・・・
ちょっと救われた気がした。
ずっと何も考えられなかった私
山ちゃんやH子ちゃん、潤ちゃんのおかげで
少しずつ変化が訪れている
でも・・・私にはやっぱり解らなかった
自分が何をどうしたいのだろうか?
いろいろな選択肢は浮かんでいるのだけど・・・
それを選択する事も決断する事も自分の中で出来ていない。
皆がいろいろ協力してくれたり
いろいろ調べてくれたり・・・
なのに肝心の私自身が方向性を決められないような・・・
Mと連絡が取れれば・・・
Mが何を考えているのか知りたかった。
ただ一方的に連絡が途絶えていて
何がなんだか解らない事が私自身
何かを選択する事を拒んでいるような気がした。
私は思い切ってA課長に電話をかけた。
どうした??
今大丈夫ですか?
今は大丈夫だよ
実は・・・私が相談したい事があって・・・
でもその件で課長に迷惑がかかるといけないので
課長が個人として聞くか、会社の上司として聞くかは
課長の判断に任せます。
解ったよ
そして私はA課長に今回の件を話した。
A課長は最初は「えっ? Mが??」と驚いていたけど
今まで知らなくてごめんな
そう言った。
A課長が誤る事ではないのに・・・。
迷惑かけてすみません
それは言わない事
はい・・・
それにしても何であいつは連絡取れないんだ?
仕事には出てるみたいだけどな~
俺も合間見てMにそれとなく電話してみるから
すみません・・・忙しいのに
いいって・・そんな事大丈夫だから
ちゃんと食べてるか?
なんかあったら言えなっ!
A課長はこの間と同じように優しい言葉をかけてくれた。
少しでもMが何を考えているのか知りたかった。
A課長なら悪いようにはしないだろう。
夜 潤ちゃんとメッセした。
潤ちゃんの言ってる事は正論かもしれないけど
この間実家に行かなかった事にやっぱりこだわっているようで・・・。
この日は潤ちゃんが実家に電話する話で
いろいろ会話していたんだけど・・・
「考えすぎじゃない?」って思える部分も結構あって
なかなか煮え切らない。
本当は電話するのが嫌なのかもしれない・・・。
時々考え込むようにメッセが途切れる。
難しい言葉を並べて離してくる潤ちゃん
でも考えている事が解るようで解らない・・・。
この日も潤ちゃんとのメッセは深夜まで続いた。
でも・・・解決策は見出せないまま
「今日はもう止めよう」そう言って会話を終了した。
もうこんな毎日は嫌・・・
なんでこんな事になってるんだろうか?
私だけが悪いのだろうか?
仕事に行けない私が悪いのだろうか?
外に出られない私が悪いのだろうか?
また自分を責めて追い込む。
次の日 山ちゃんから電話が来た。
潤ちゃんと話したらしい。
やっぱり潤ちゃんは
この間実家に行かなかった事が引っかかっているようで・・・
外に出るのが怖いんだから仕方ないよ
それが今の私なんだよね
それでも このままにしてたって何も解決しないぞ
潤ちゃんの言ってる事は解るけど・・・
でも今の私には無理なんだよね
それが出来たら仕事にも行けるよ
だからってどうするのよ?
潤ちゃんは親に電話するとか言ってる
それも聞いた
でも潤もいろいろ考えてるみたいだ
うん なんかいろいろ言ってたけど
話は途中のままなんだ
私がMの実家に電話すれば良いの?
お前も何かしないと・・・
解った 自分でやればいいんだよね?
何も出来ない私が悪いんでしょ?
思わず感情的になってしまった。
私が何も出来ない事を責められてる気がした。
それなら自分でやってみれば?
山ちゃんはそう言って電話を切った。
自分で何とか出来るならそうしたい。
以前の私は何でも自分で行動してきた。
それが出来ない事が辛い。
仕事だって今までいい加減にやってきた訳じゃない。
自分なりに頑張ってやっと落ち着いた所だった。
部署を移動になった時
会社の期待も大きかった。
私はそれに答えようと頑張っていた・・・
なのに行けなくなってしまった。
行きたくなくて行かなかった訳じゃないのに
私の気持ちは解ってもらえないんだろうか?
悪いのは私なのだろうか??
またこの日も眠る事が出来なかった。
ウトウトしかけると動悸がして目が覚めてしまう
ぼんやりとMの顔が浮かぶ
苦しそうな表情のM
貴方は何がそんなに苦しいの?
気づくと私はMにメールを送っていた。