福岡市博多区店屋町のドーナツ店「ケンジーズ・ドーナツ」が今月、ドーナツの揚げ油で走るディーゼル車で移動販売を始める。環境に優しい植物油を燃料とした乗用車は、福岡では珍しいという。軽油の値上げが続く中、財布にも優しい。店長の上杉健治さん(39)は「新しいシステムを広めたい」と意気込む。
移動販売に使うのは「ストレート・ベジタブル・オイル(SVO)」仕様車。4年ほど前から個人での導入が全国で広がり、九州でも熊本市で約10台が走っているという。
「ケンジーズ−」は今年3月からドーナツの販売を始め、多いときで1日1300個を売り上げる。環境へ配慮し宅配は自転車を使用、材料も無農薬の九州産。
だが、問題は毎日約25リットル出るという廃油の処理。当初は廃油せっけんを作って利用・販売していたが、あまりの油の多さに在庫が増えすぎ、SVO仕様車を2年前から使用している熊本市の歯科医、鳥取孝治さん(49)に相談。同仕様車の導入を決めた。10月から試運転したところ順調だったため、移動販売を始めることにしたという。
SVO仕様車は維持費の面でも注目される。福岡市内のガソリンスタンドで、軽油価格は1リットルあたり125円前後。月に150リットル給油するという鳥取さんなら約2万円、1年で24万円程度節約できる計算だ。「SVO仕様車の燃費は1リットルあたり約7キロ。軽油に比べ少し落ちるが、廃油は無料で分けてもらっているので気にならない」と鳥取さん。
排気口から出る煙は、ほんのりと揚げ油のにおいが漂う。上杉さんは「ドーナツ店なので油の確保に苦労しない。移動販売のドーナツを食べて環境について考えて」と話している。
=2007/11/02付 西日本新聞夕刊=
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