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奈良・田原本町の放火殺人:調書漏えいの鑑定医を起訴 「共犯成立せず」著者は不起訴

 奈良県田原本町で昨年6月に母子3人が死亡した放火殺人事件を巡り、殺人などの非行事実で中等少年院送致となった当時高校1年の長男(17)の供述調書を引用した単行本が出版された秘密漏示事件で、奈良地検は2日、長男の精神鑑定をした医師、崎浜盛三容疑者(49)=京都市左京区=を刑法の秘密漏示罪で奈良地裁に起訴した。本の著者でフリージャーナリストの草薙厚子さん(43)は容疑不十分で不起訴処分とし、捜査を終結した。同罪での起訴は極めて異例。

 本は「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。起訴状などによると、崎浜被告は昨年8月に奈良家裁から長男の精神鑑定を命じられた。同10月5、6両日ごろ、鑑定資料として提供された長男や父親の供述調書の写しや、臨床心理士による長男の心理検査の結果を京都市内の自宅やホテルで草薙さんに見せた。同月15日ごろには、長男の精神鑑定結果などを書いた書面を草薙さんに渡した。

 奈良地検は、草薙さんについて、崎浜被告と共謀し、本の出版で供述調書の内容を漏らした「身分なき共犯」の可能性もあるとみて捜査。しかし、崎浜被告が供述調書を引用する形での本の出版を事前に知らなかったことなどから、2人に共犯関係は成立しないと判断した。また、研究室などを家宅捜索した京都大教授(49)は、関与がなかったと判断した。

 奈良地検の野島光博次席検事は「表現の自由については念頭に置きつつ、出版で被害を受けた人がおり、適正な告訴を踏まえて捜査した」と話した。一方、草薙さんは講談社を通じ「鑑定医の方はもとより、ご迷惑をおかけした方々には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、公権力の介入は許せません」とコメントを出した。【阿部亮介】

毎日新聞 2007年11月3日 東京朝刊

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