難治性・遷延性うつ病の治療薬として用いられてきた向精神薬「リタリン」について、厚生労働省が26日、適応症からうつ病を削除することを正式に承認したことにより、波紋が広がっている。
今後リタリンは、10代から20代前半の若者を中心に1,000〜3,000人に1人の頻度で発症し、日中に過度の睡魔に襲われる睡眠障害・ナルコレプシーのみに使われることになる。製造販売元のノバルティスファーマ社は2008年初頭を目途にナルコレプシーを正確に診断できる医療設備・施設の整った医院・医師を精査した上でリスト化して、リタリンを処方できる医療機関・薬局を登録制にして流通を厳しく管理する方針だ。
だがこれによって煽りを食っているのは、ADHD(注意欠陥/多動性障害)患者たちだ。ADHDの症状としては、時間が守れない、物の整理や情報の管理ができない、大切なことを忘れる、見通しをつけるのが苦手で、衝動的に行動してしまう、注意力を持続することができない等、日常生活をきちんとこなす能力に欠陥が現れる。近年、マスコミでもその存在が取り上げられるようになってきた。
自覚症状を持ったADHD患者は専門医に通い、治療に専念する。ADHD治療に用いられる主要な薬がリタリンだ。都内の専門医は次のように語る。
「リタリンの適応症にADHDは入っていないため、100%患者が自己負担の保険外診療でリタリンを処方さています。しかし、このまま行きますと、来年の1月以降からは治療にリタリンを処方できなくなります。患者にとっては死活問題です。同薬を服用することによって、社会生活を普通に営めるようになった人は路頭に迷ってしまいます。治ったのに再び病気に戻れというような行為です。患者の基本的人権を著しく侵害する暴挙です」
リタリンの問題を追う医療ジャーナリストは次のようにコメントする。
「リタリンは欧米ではADHDの治療薬として長年、使用されています。認めていないのは日本ぐらいで、精神医療の後進国ぶりを露呈しています。厚労省も製薬会社もリタリンの恩恵を被っている患者の存在は100%無視しています。規制先にありきで患者が声を上げても全く聞こうとしません。患者の人権や健康を一顧だにせず、一部官僚とメーカーのトップが独断で決めたことをひたすら押し進めるのは、まるで独裁国家のようなやり方です」
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関連リンク:
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