肥満、環境破壊…デスパレートな郊外暮らし
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■「アメリカン・ドリーム」実現に負の側面
「あなたたちに郊外生活は無理よ。都市に住むべきだわ」
隣家のジェニーが、半ば憐れみを含んだ顔で言う。週末、自家用車2台の日常点検を手伝ってもらったときのことだ。
「タイヤの空気圧が足りない」という彼女に、夫が「これから仕事なんだけど」と答えたら、ため息とともに“宣告”された。
だが悲しいかな、同意せざるを得ない。日本では、東京都内の下町に住んでいた。駅から徒歩5分、通勤時間20分。愛車はママチャリだった。
庭つき一戸建ての今の家は、ワシントンDCの中心部から約15キロ。この首都は面積が東京23区の5分の1ほどで、ホワイトハウス中心の小さな街だから、ここも郊外になる。木々に囲まれた庭には、アライグマも出没する。
駅まで車で7分、娘の保育園は20分、息子のサッカー練習場には10分。家族の送迎で1日計2時間かかる。車で5分のショッピングセンターでの買い物も、だだっ広いから時間がかかる。
郊外生活の手間はまだある。芝刈り、落ち葉掃き。バスルーム3つ、寝室4つ、地下室1つの家の掃除。ジャパニーズ・ビジネスマンの妻には、ちと過重負担だ。
「大体、郊外ライフがアメリカ人の二酸化炭素排出量を増やしてるんじゃない?」。悔し紛れに夫に愚痴る。「東京の暮らしは便利だったなあ。目の前が豆腐屋、歩いて5分でスーパー。エコな生活だよねえ」
米国人が郊外に住み始めたのは、戦後、大量生産型住宅が登場し、若い復員軍人のための郊外型ニュータウンが次々に建設されてからだった。
日本の郊外への宅地の広がりは都心の地価高騰が主因だが、米国の場合は事情が違う。
車を手にした白人中産階級が郊外に広い家を求め始めたのと同じころ、黒人ら貧困層が流入し、都心部が荒廃した。ハイウエー網の整備が、移住の動きを加速した。ちなみにこの国では、公共交通機関は貧しい人のためにある。
セレブな人の家は、さらに人里離れている。森の奥の広い牧草地に、ポツンと立つ豪邸。自家用機があれば不便ではないらしい。
車、家、飛行機。アメリカンドリームを実現させた郊外は、負の側面もあった。
「戦前には、女性の社会進出がかなり進んでいたが、郊外への移動は、一時的にせよ、このテンポを遅らせることにもつながった」-デビット・ハルバースタム著『ザ・フィフティーズ』
ほとんど歩かないが移動距離だけは長くて忙しい生活は、妻を社会から遠ざけた。ファストフードがはやり、肥満も増加した。今も流れは変わらず、日本でも放映されている人気ドラマ「デスパレートな妻たち」は、鬱憤(うっぷん)をためる郊外の女たちが主役だ。
エコ意識が急激に強まりつつある昨今は、「エコでないこと」も問題視されている。
車はもちろん、芝刈り機も大量の二酸化炭素を排出する。高級住宅街が山に向けて広がるカリフォルニアでは、山火事が住宅地で発生している。
若い人には、手間のかかる郊外を嫌い都市を選ぶ人も増えている。このあたりでも、ワシントンDCに隣接する地域にコンドミニアム(マンション)が大量に建設され、共働き夫婦や単身者に人気だ。店があちこちに点在し、オーガニックで売る高級スーパーがある。自転車で通勤する人の姿もある。行き交う人を見ていると、街はこうでなくちゃ、と思う。
「みんな郊外が悪い。交通渋滞も、肥満児も」。そんな書き出しの新聞記事を見つけた。
「でも、牧場を捨ててDCのコンドミニアムを買うのはちょっと待て」と記事は主張する。何で? 「トウキョウなどは、ヒートアイランドと呼ばれる問題がある…」
蒸し暑い東京の夜を思いだす。
どちらがデスパレート(絶望的)か、確かに悩ましくはある。(内藤敦子)
◇
■ないとう・あつこ フリーラーター。上智大学ロシア語学科卒業後、1990年、産経新聞社入社。社会部、夕刊フジ報道部などを経て2006年退社。同年12月から米バージニア州アーリントン在住。
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