◎隣県知事懇談 次は富山県との話し合いを
谷本正憲石川県知事と西川一誠福井県知事、そして石井隆一富山県知事と古田肇岐阜県
知事が、先ごろ相次いで懇談した。空港や港湾の利用促進であらためて連携を確認するなど、それぞれ相応の成果があったようだが、もう一つ、大事な組み合わせが残っている。次は谷本、石井両知事が話し合う番だろう。
谷本、石井両知事は昨年六月、石川県内で初めて懇談し、今年度以降も年一回程度、そ
うした機会を持つことで一致している。順番で言えば、今度は富山県内で開催されることになってはいるのものの、まだ見通しが立っていないという。日程調整を急ぎ、具体的な成果があれば、両県の来年度予算編成に反映させてもらいたい。
石川と福井、富山と岐阜にも共通する課題は少なくないが、歴史、経済、文化など各方
面の交流の深さを考えれば、石川と富山がともに考えなければならない課題はそれ以上に多いように思われる。具体的には北陸新幹線の早期整備や金沢開業に伴ってJRから経営分離される並行在来線の運営、能越自動車道の建設促進などがそうだ。中には両県の利害が必ずしも一致しないもの、むしろぶつかるものも少なくない。トップ同士が腹を割って話し合う意義は大きいはずである。
典型的なのは「空の玄関口」の利用促進だろう。小松空港の福岡、沖縄便や富山空港の
大連、ウラジオストク便などのように競合しない路線については、手を握り合って利用者増を目指した方が得なのは自明であるにもかかわらず、両県の担当者間には遠慮があるようだ。かつて、上海便の開設をめぐって激しい綱引きを繰り広げたのがまだ尾を引いているのか、石川は西ばかり、富山は南と東ばかりを向きがちなのだ。そんな微妙な空気を吹き飛ばせるのは、やはり知事しかいないのではないか。
最近、金沢市と高岡市のように広域観光などをキーワードにした市町村レベルの「県境
越え交流」が深まっている。県同士、知事同士の距離ももっと縮める努力が必要だろう。「年一回、場所は交互に」などと形ばかりにこだわらず、非公式も含めて積極的に意見をぶつけ合い、信頼関係を築いてほしい。
◎国連の排出権審査 甘く見ると突き返される
来年から温室効果ガス削減の本番入りする京都議定書では、いろいろな削減方法を認め
ている。それを総称して「京都メカニズム」と呼ぶが、その中でも特に注目されているのが「クリーン開発メカニズム(CDM)」である。
簡単にいえば、先進国が削減義務の課せられていない発展途上国や市場経済移行国にお
いて省エネあるいは温室効果ガス回収といった排出削減プロジェクトを実施し、削減できた量を「排出権」として獲得でき、それを政府などに売ることを認める仕組みである。
認めるかどうかの審査に当たるのが、各国から選ばれた十人の専門家で構成される国連
の理事会である。先ごろ、その理事会が東京電力と三井物産による申請を却下した。経済産業省などの承認を経て国連に計画を申請したもので、日本の企業では初めての却下だったため、大きな話題になった。
報道によると、却下された東京電力と三井物産の申請は中米ホンジュラスでサトウキビ
を発電用燃料にする事業だった。国連は却下した、詳しい理由を明らかにしていない。申請者には厄介だが、温暖化防止のためには厳格であるべきだ。
しかし、日本企業にだけ厳しいのではなく、これまでに英国の企業などの四十六件の申
請が却下になっているそうである。国連の審査を甘くみると突き返されるのである。心して取り組みたいものだ。
CDMの相手国が途上国や移行国だと、削減コストが国内の二十分の一以下で済むほか
、相手国にとっても技術や資金の流入のチャンスとなる。先進国が削減目標を達成するための切り札として特に注目されているゆえんだ。
京都議定書での日本の削減目標は二〇一二年までに一九九〇年比で6%となっているが
、運輸やオフィスなどの部門や家庭の排出が増加しており、削減どころか逆に九〇年比で6、7%増えたといわれる。
私たちは先に「もとより達成は大事だが、それよりも大事なのは正直な実行だ」と主張
した。焦って、インチキに手を染めるようでは、国際社会における信用が未達成以上に失墜するからだ。