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北海道警が架空の固定協力者への交付額などを記録していた「捜査費設定書」の写し
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「副署長や(本部の)次長は金のやりくりで頭がいっぱい。自分も金のことばかり考えていた」。県警の捜査費問題が浮上して間もない昨年夏、県警幹部の一人は「金庫番」の悩みを漏らした。
この幹部はそれ以上話そうとはしなかったが、内部から組織的な不正を認める声が次々と上がった。「謝礼を支払う協力者などいない」「裏金は副署長(次長)が取り仕切り、緑色の手提げ金庫で管理していた」。中には詳細な手口を語る“内部告発者”も複数人いた。
ある県警関係者は「署長の方針、言い換えれば金に対する欲深さが、裏金のノルマ(金額)になる」と指摘。「金に欲深い署長に仕えると大変。副署長と会計課長が金策に追われる。結局、ほとんどの署員が領収書偽造に巻き込まれていた」
捜査費を流用した裏金づくりでは、架空の協力者に謝礼を支払う形で工面するのが「一般的」。とりわけ、年間を通じて定期的に謝礼が支払われる固定協力者は、金額が通常事件の協力者より高く設定され、万単位にもなる。そのため裏金の大きな資金源になっていたという。北海道警では「捜査費設定書」という書類で固定協力者名目の裏金を管理していた。
実際、固定協力者として領収書偽造を任されていたという県警の元男性職員も「裏金づくりだった」と事実関係を認める。男性は一九九〇年代後半、南予の警察署で捜査とは無縁の部署に所属。二、三カ月に一度、警備課の巡査部長に縦三センチ、横四センチ程度に切った封筒の切れ端を手渡される。中には下書き用のざら紙と領収書が入っていた。
「いつものように書いてよ」。警備課員の指示通り、男性は下書き用紙に書かれた住所と氏名を、既に印鑑が押された白地の領収書に清書。この作業を一年以上続け、額面二万―三万円の領収書を十回以上作った。もちろん男性はその金を受け取っておらず、数十万円が闇へと消えた。
元大洲署会計課長は解説する。「職員を固定協力者にするやり方はどこでもやっている。いったん任すと、転勤するまで一人の固定協力者を担当させるため、一年で転勤するような署員にはかかわらせない。車両係など永年勤続者にさせていた」
このような架空の協力者を仕立てての裏金づくりは「氷山の一角」。大洲署では実在しない「アジト」を借りたことにし、諸費用を裏金化していたという。「アリバイ工作のため、アジトの見取り図や鍵まで作っていた」
別の元職員は、署内でノルマとされた裏金の額が工面できない際、警察署間で偽造領収書の交換までしていた。「多額の裏金が必要な場合、署内でやりくりができず、会計課の幹部が仲のいい他署の会計課幹部に頼んでいた」
こう暴露した後、吐き捨てるように言った。「ノルマに追われ、組織のため、上司のためにと、裏金をつくらざるを得なかった」