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組織的な裏金づくりを認め、陳謝する道警の芦刈本部長(左から2人目)=13日午前11時30分、道議会総務委員会 |
十三日午前十一時すぎ。道警の芦刈勝治本部長が道議会総務委員会で「道議会、道民の皆さまに深くおわび申し上げます」と手元の紙を読み上げ、深々と頭を下げた。その姿に、カメラのライトが浴びせられる。
この間、十数秒。過去に何度も見せ付けられた光景だが、今回はこれまでと大きく意味が違う。
問題が発覚した直後の昨年十二月三日。芦刈本部長は道議会で、旭川中央署の会計文書が外部に流出し、疑惑が指摘されたことについて「(会計文書は)出所不明だ。内容を見ていないが調査の必要はない」と言い切った。裏金が存在しない以上、会計文書の偽造はない。だから公金の私的流用などの不正もない。不正はないから調査も不要、という理屈だった。
あれから約十カ月。道警による今回の「内部調査中間報告」は、一九九八−二○○○年度という限られた期間ながら、組織全体での裏金づくりを初めて、かつ全面的に認めた。しかも裏金づくりは、幹部や会計担当者が熟知していたことも明らかにしたのである。
■必死の証言
道警は「全面否定」をなぜ覆したのか。おそらくは、幹部たちが思うほど道警は「一枚岩」の組織ではなかったことに最大の原因がある。
システム化された裏金づくりの世界では、会計文書などの偽造は現場捜査員らが担い、幹部はカネを使うだけという構図がある。文書偽造や書類のつじつま合わせなど手を汚すのは、常に末端だ。それにもかかわらず上層部は、例えば、弟子屈署の内部調査で「同署の裏金は斎藤邦雄次長の時代にのみ確認された」という趣旨の結果をまとめるなど、責任を下へ押しつける態度を取り続けた。
上層部のこうした「逃げ」と「保身」に対し、捜査員らがどれほど怒ったかは想像に難くない。
「現場は裏金を止めようと、必死だったんだ。それだけは分かってほしい」。取材班にこう訴える捜査員が目立ち始めたのは、このころだ。彼らは道監査委員の聴取に対しても、相次いで「裏金はあった」と証言するようになった。
監査委員関係者も「捜査員の率直な証言で(道警に裏金づくりがあったとの)確信を持った」と明かす。
道警上層部は、こんな現場捜査員らの「反乱」の強さを知ったからこそ、全面否定はもう無理と判断したのだ。
■身内の論理
元釧路方面本部長の原田宏二氏は道議会に参考人招致された三月、議場で道警幹部を前にして「道警の内部調査にどれほどの意味があるのか」と問うた。君たちこそ裏金の実態をよく知っているじゃないか、いまさら何の調査が必要と言うのか、と。そして「いまが道警再生の最後のチャンス」と語りかけた。
だが、道警幹部は、やはりこの言葉を真剣に聞いていなかったようだ。
今回の中間報告は、裏金の「私的流用」はなかったと断言し、内部調査に関連して明らかになった会計書類の改ざんや大量廃棄問題にも触れていない。「七億三千万円は捜査活動に使った」というが、その物証を示していない。そもそも上層部が「ない」とたんかを切った裏金は、いつの間に、どんな理由で「幹部や会計担当者はみんな知っていた」と変わったのか、その肝心の説明も記載がない。
内部調査とその中間報告は「道警の身内の論理」に貫かれている。そして、芦刈本部長はこの日の道議会終了後、笑みを浮かべ記者団に語った。
「私は適正に(予算執行が)行われていたと当初、考えていたんですよ」「自分たちの問題は自分たちで解決するということは、理解していただいたと思いますね」 | |