守屋武昌前防衛事務次官の29日の証人喚問を受け、民主党は「疑惑はさらに深まった」として、追加喚問要求の続発など攻勢を強めている。新テロ対策特別措置法案の実質的な審議に入らせず、成立を阻止するのが狙いだ。一方、政府・与党にも疑惑の解消ができたとの見方はない。なんとか30日の福田康夫首相と小沢一郎民主党代表の党首会談で局面の打開を図りたい考えだが、突然の設定には戸惑いも広がる。
「全然解明できていない。守屋氏本人の再喚問も含めて事実を明らかにしていく必要が出てきた」。民主党の鳩山由紀夫幹事長は29日、党本部で記者団に強調した。
民主党は喚問要求続発に加え、新テロ特措法案を審議する衆院特別委に首相が出席したうえで、海上自衛隊補給艦の給油量訂正・隠ぺい問題の集中審議も求めている。政調幹部は「与党は早く参院に送りたいのだろうが、疑惑追及でどれだけ引き延ばせるかが勝負だ」と語る。
守屋氏の接待問題についても個人的問題ではなく、自公連立政権による政官業癒着の象徴だと位置づけ、隠ぺい問題、接待問題をセットにして、隠ぺい当時の官房長官の首相、防衛庁長官の石破茂防衛相の問責決議案提出もちらつかせ、政府・与党を揺さぶる方針だ。
これに対し、自民党の伊吹文明幹事長は29日の会見で「参考人の意見聴取が必要なら現場で協議して構わない。ただ、鳩山氏も『いたずらに審議を引き延ばす必要はない』と言っている」と、審議引き延ばしをけん制。しかし、公明党の漆原良夫国対委員長が「疑惑はほとんど解明されていない」と認めるなど、与党内には閉塞(へいそく)感も漂う。
このため、政府・与党内には30日の党首会談への期待感は強い。自民党の大島理森国対委員長は「国益の観点から接点、合意を目指すべくお願いしたい」と述べた。
党首会談をめぐっては、首相は29日朝、新幹線で地元・京都から帰る途中の伊吹氏の携帯電話に連絡。伊吹氏が帰京後、正式に「党首会談を進めてほしい」と指示した。
これに対し、小沢氏も安倍晋三前首相からの党首会談の呼びかけを拒否したことに触れつつ、「安倍さんの時に続いて、また断ったと言われると困る。首相が言っているなら、受けるしかないだろう」と、山岡賢次国対委員長に受け入れる考えを伝えた。
ただ、政府高官は党首会談の行方について「出たとこ勝負だ」と語っており、何らかの合意が成立するかは不透明。また、小沢氏が安倍氏の時と態度を一転し、会談に応じたことに対しては「何を考えているのか少し不安だ」(公明党幹部)と警戒する声も上がっている。【鬼木浩文、須藤孝】
毎日新聞 2007年10月29日 21時01分 (最終更新時間 10月29日 23時02分)