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実際のロボットは作れない、けれどロボットバトルを楽しみたい人たちへ

ロボット作りと高専を舞台にした熱血ゲーム
「THE ロボットつくろうぜっ!」製作者インタビュー
Reported by 森山和道

「THE ロボットつくろうぜっ! 〜激闘!ロボットファイト〜」というゲーム

 今年8月に株式会社ディースリー・パブリッシャーからPlayStation 2用のゲームとして発売された「SIMPLE2000シリーズ Vol.104 THE ロボットつくろうぜっ! 〜激闘!ロボットファイト〜」(2,100円)は、二足歩行ロボットによるバトルを題材に、高等専門学校(高専)を舞台として展開する一年間の物語だ。

 ゲームは、1年間の学園生活シミュレーションとロボットによる格闘アクションで構成されている。まず基本ストーリーを紹介しておこう。

 プレイヤーが操る主人公は「草壁ケン」18歳。ほら吹きのお調子者で、可愛い女の子と格闘ゲームが大好きな湘南九十九高専・機械工学科の3年生だ。実家は自動車整備工場で、なんとなく高専に入ったが特に夢もなく、不良の真似事をしながら暇をもてあまして過ごしている。

 そんなとき、幼なじみの「伊東アイ」から廃部寸前のロボット研究部について相談される。ケンはロボットにはまったく興味がなかったが、ロボット雑誌に掲載されていた「聖サテラ学院」が誇るスーパー美少女「来宮アスカ」の写真に釘付けになる。

 こうしてケンは自作二足歩行ロボットによる格闘大会「ROBO-X」での優勝、そしてアスカと付き合うことを夢見て、いじめられっこの「手塚トオル」、ケン&アイの幼なじみで秀才の「仁科ジュン」ら、仲間たちと喧嘩したり協力したりしながらロボットバトルへ挑戦することに! という、極めて単純明快な、笑いあり恋ありのドタバタ青春ストーリーである。もちろんライバルそのほかも登場する。

 ディースリーパブリッシャーによる特設サイトでも見ることができるオープニングタイトルの左肩には夕方5時半からオンエアされていたアニメを彷彿とさせる「5:30」という文字が躍っている。このあたりからもゲームのノリや雰囲気は何となく感じて頂けるのではないだろうか。もっとも、ストーリーのなかで主人公達が彼らなりに将来や自分自身について悩んだりするといった、少し現代風の演出もある。


リアルなロボット製作過程と動きを再現

 プレイヤーは、ヘッド、ボディ、アーム、レッグの4つのパーツを自作して、ロボットバトルに挑む。トータルパーツ数は全282種類(ボディ62種類、アーム61種類、レッグ62種類、ヘッド82種類、エンブレム15種類)。ストーリーモード以外にも「FREE MAKE」モードがあり、こちらで組み上げたロボットをユーザー同士で戦わせることも可能だ。

 簡単なパンチ動作や前進後退といった動作は最初からプリセットされているが、相手に大きなダメージを与えられる特殊攻撃は「プログラム開発」して組み込んでやらなければならない。

 「プログラム開発」や「修理」、「パーツ作製」、「パーツ強化」などの各スキルは、一週間ごとにスケジュールを設定して決めていく、シミュレーションゲームお馴染みの方法で上昇させていくことになる。


シミュレーションパートでは、各キャラクターごとに一週間のスケジュールを決める 作業の種類によって、キャラクターごとにスキルレベルが設定されている 作業を終えると経験値がたまり、スキルがレベルアップする

ロボットの選択画面。パーツが沢山集まれば、複数のロボットをストックしておくことができる ロボット組み立て画面。シミュレーションパートで入手したボディ、アーム、レッグなどのパーツを組み合わせてロボットを組み立てて行く いわゆるイロモノパーツも

 毎週末にロボットパーツショップや学校内のリングで試合を行なうのだが(全46試合)、試合結果次第で次の月に得られる部費と、毎月一回のボーナスシナリオを見られるかどうかに影響する。

 なお試合は、3ポイント先取・1対1の対戦格闘。ダウンカウントはなく、リングアウトでも1ポイント取られるため、極めてスピーディに行なわれる。ロボット操作に馴れないうちはボーっとしているうちにやられてしまうだろう。

 このゲームに登場するロボットたちは、アニメのロボットのように空を飛んだりミサイルを撃ったりできるわけではない。もっぱら、どちらかというともっさりもっさりとした直線的な動作が中心で、8角形のリングの上で、パンチを中心にした押し合いをするだけだ。「ROBO-ONE」に象徴される現実のホビー向け二足歩行ロボットそっくりである。

 ロボットが戦うと、攻撃をくらったときはもちろん、技の出しかたによっては自分自身のパーツにもダメージが蓄積される。戦い方によっては、少ない部費のなかから修理にあけくれる日々が続く。あまり修理ばかりやっていると高度なパーツを作る時間も予算もなくなってしまう。こんなところも現実のロボットライフによく似ている。

 いっぽう、もっさりした動きではあるものの、いや逆にそれだけに、タイミングと間合いを読み切って相手を倒したときの爽快感は、なかなかのものだ。思ったままに動くような操作感覚ではないことが逆に、実際のロボットを操縦しているような感覚を呼び起こさせるゲームバランスとなっている。もちろんゲームなので多少のけれんは含みながらも、実際にロボット作りをしたことがある人ならばニヤリとできる、ある意味、非常にリアルな一面を持ったゲームだ。現実のロボットバトルと違って、歩行の不安定さやダウンの曖昧さもない。


試合の様子




自在に動かせないところがゲームのポイント

 実際にプレイすると、見た目以上にハマる要素を持っている「THE ロボットつくろうぜっ!」。その企画経緯そのほかを、製作のディースリーパブリッシャー・ソフトウェア事業部プロデューサーの前田桂代子氏と、開発にあたったヒューネックス株式会社開発部第一開発グループ エキスパートの岩崎大介ディレクターに伺った。

 もともとの企画はヒューネックスからの提案で、立ち上げ当時はROBO-ONEのような二足歩行ロボットによるバトルをモチーフにしたものではなく、「高専ロボコン」を舞台にしたゲーム企画だったという。


ディースリー・パブリッシャー ソフトウェア事業部 プロデューサー 前田桂代子氏
 「高専ロボコンは番組が放送されているとついつい見ちゃう人が結構多いですよね。他のメーカーのロボットゲームは、ロボットアニメを題材にしたゲームがほとんどで、そちらは確かに市場も人気もありますが、いっぽうで、リアルなロボット製作を舞台にしたゲームはなかった。ロボコンは、SIMPLEシリーズのコンセプトにも合っていると思いました」(ディースリーパブリッシャー・前田氏)

 しかし、ちょうど企画が走り出したころ、民放でROBO-ONEの常連組をベースにした番組がいくつか放映された。それによって「ROBO-ONE」という二足歩行ロボットによるロボコンが存在することと、ROBO-ONEが(「ROBO-ONE GP」も含めると)数カ月に1回のペースで行なわれていることを知った。

 岩崎氏は実際の「ROBO-ONE」のロボットの動きを見て「ここまでできるんだな」と思ったそうだ。思っていたよりもロボットの動きが速いことに驚いたのだという。そして「二足のほうが燃える」と感じた。「二足歩行ロボットの対戦のほうが、見え方として『華』があるだろう」ということになり、ゲームの企画の方向性が変わった。

 なお、設定された目的に対してアイデアを競いあう高専ロボコンと、アニメなどの影響を受け「それっぽい」ロボット作りを目指す「ROBO-ONE」の間には、実際のロボット製作者たちの間でも、かなり違いがある。もともと高専出身者もいた開発チーム内部でも議論はあったそうだ。しかし、ロボットのバリエーションも多くなってしまう高専ロボコンよりも、二足歩行ロボット対戦のほうが、ゲームとして成立しやすく、分かりやすいのではないかという判断になった。製作スタッフにロボットアニメ好きの男性が多かったことも影響したという。プレイすると分かるが、登場人物の台詞はみんなノリノリだ。


ゲームに登場するロボットの一例



 プロデューサーの前田氏は、このゲームの対象者は「興味はあっても実際にはロボット製作をしてない人がほとんどだろうから、ゲームで疑似体験をしてもらいたい」と考えたという。

 「私はもともとロボットアニメを多く見ていたほうでもありませんでした。ROBO-ONEも、まずはテレビで見ました。実際のイベントを見に行くと、テレビで見るよりは、動きがもっさりしていました。そんなに簡単にパンチがあたるわけでもないし、もどかしい。でも、もどかしいけど、それがヒットして決まったときの爽快感みたいなものは、これまでのゲームにはないなと感じました」(前田氏)

 最初はもっさりしているロボットの動きが、だんだんパーツを強化していくことで速くなって操作もうまくなっていく――。そのあたりの「らしさ」を大事にしてほしいとヒューネックスの岩崎氏に依頼した。

 岩崎氏はこれまでの雑誌記事を収集したり、ROBO-ONE関連映像を研究したりして、既存のモーションを参考にパンチや押し合いの技をピックアップしていくことで組み立てていった。「ROBO-ONEを見て思ったのは、基本的には『押し合い』なのかなと」。基本的にはK-1のような派手な格闘技というよりは、むしろ相撲のような感じだな――と思ったのだそうだ。そこでパンチと押し出しのような移動技をベースにした。

 移動は、基本的に直線的な動きのみとし、曲がりながら歩行することはできないようにした。左右への移動パターンも制限した。「あまり自在に動かせないほうが実際のロボットらしい」と判断したのだという。こうして、実在のロボットのような動きができあがったのである。

 このゲームをプレイしていると、実際のROBO-ONEでよく見られる、お互いに攻撃を仕掛け合うのだがすれ違ってしまって、端から見るとロボットがグルグル回っているだけで何をしているか分からない、という状況がときどき再現される。これは別に狙ったものではなく、あくまでロボットの動きを直線的なものに制限した結果として生じているのだそうだ。逆に言えばいまのROBO-ONEロボットの動きはかなり直線的なものだということでもある。


 もちろん、ゲームならではの爽快感も、ある程度は必要だ。実際のROBO-ONEにはあまり見られないが、「THE ロボットつくろうぜっ!」の中では活躍する技が「蹴り技」だ。蹴り技がないと、どうしても派手さに欠ける。格闘ゲームとしても、動きが制限されてしまう。しかしあまりやりすぎると、リアルさが損なわれる。そこで、スマートな蹴り技はやめ、基本的に蹴ると自分自身も倒れ込んでしまうようにした。先に述べたように、倒れ込むと自分にもダメージが蓄積されていく。また、「ダッシュストレート」のような、相手に大ダメージを与えられる「溜め」のある技も、現実のホビーロボットではまだ実現できていない。

 そのほか、一部ROBO-ONEでも始まった「投げ技」の導入も検討はされたそうだ。しかし、それを取り込んでいくと、現在のROBO-ONEっぽさがなくなってしまうと考えたためにやめになった。確かに、投げ技が入り始めると際限がなくなったかもしれない。

 また、実際のROBO-ONEではダウンカウントがあるが、カウントはなしにした。ゲームの世界ではコマンド入力も相手に与えたダメージも視覚化されているので、実際のROBO-ONEにあるようなダウンの曖昧さもなく、カウントがないほうが試合もスピーディに展開していくので、これは正解だったのだろう。


実際のROBO-ONEではあまり見ない蹴り技も ダウンカウントがないことが逆にスピーディな試合展開を可能にした

 なんといっても実際のROBO-ONEロボットとの大きな違いは、転倒しないことだ。実際のROBO-ONEは、以前とは違ってだいぶ安定してきたとはいっても、まだまだ「スリップ」と呼ばれる転倒が非常に多い。このゲームでは転倒がないので、エンターテイメント性がそのぶん非常に高くなっている。

 アドベンチャーパートは、基本的にプレイヤーが楽しくなれるように意識して、ロボコンや高専の雰囲気、世界観を構築していった。たとえばこのゲームでは、3年生までは制服だが、4年生以上は私服で登場してくる。こういったところや男女比率そのほか校風などは、実際の高専出身のスタッフらの意見を参考にしたそうだ。

 このゲームは、ストーリーモードをいったん終えたあとにもロボットやキャラクターを引き継いで、何周も繰り返すことで鍛え続けることができる。鍛えたロボットはメモリーカードを持ち寄ることで、プレイヤー同士で対戦できる。ヒューネックス社内でもプレイしているそうだが、人間同士の対戦は非常に面白いそうだ。筆者自身は人間相手にプレイしたことはないのだが、あるユーザーは「人間相手だと100倍面白い」と語っていた。

 なお、最初はもっさりもっさりとしか動けないロボットも、鍛えると見違えるような速度で動けるようになる。直線的な動きしかできないという点は変わりないのだが、操作をうまく組み合わせることで、まさに超人的な動きも十分可能だという。

 今度、9月17日に大阪で企画されている「ロボつく大会」が気になるところだ。岩崎氏も「ユーザーさんが自分たちで大会を開いてくれるのは非常に嬉しい」と喜びを語る。なお、対戦では操縦者にする登場人物を自由に選べるのだが、実は登場人物にはパイロットポイントが設定されており、それぞれ個性がある。誰が選ばれるかも興味があるそうだ。


ROBO-ONE、ロボファイトなど現実のロボットバトルについて

 少しゲームそのものとは方向性がずれるのだが、自分たち自身でも実際のロボットバトルをやりたいと思うようになったかと聞いてみた。すると、ヒューネックス、ディースリー・パブリッシャーの両社で「実際のロボットを作って大会に出てみたら……」という話は出たそうだ。しかし残念ながら、現実的にそれほどの費用と時間もかけられないし知識もない、ということでパスすることになったという。費用、時間、知識の3点はロボット実作者からもよく聞く話である。やはり、現状のホビーロボットは敷居が高いのだ。

 「基本的な知識やノウハウもなく、漠然とやってみたいと思っただけなんですよね。でも、やっぱり興味はあるんです。まさしくそう感じているのがこのゲームの一般ユーザーだと思うんです。その人たちがゲームという形で疑似体験してくれたらと思います」と前田氏は語る。


ディースリー・パブリッシャー ソフトウェア事業部パブリシティ担当 大池香里氏
 ディースリー・パブリッシャーのソフトウェア事業部パブリシティ担当の大池香里氏も、ROBO-ONEを紹介する番組や雑誌記事でのロボットが作り出されるまでの過程を興味深く見たという。でも「自分でやるとなると、どこから手をつければいいのか分からない」点が課題なのではないかと指摘する。

 「もともと、実際のロボットは作れないけど、ロボットバトルを楽しんでみたいというのが、このゲーム企画のコンセプトだった」と語る岩崎氏は「もっと間口が広いものがあったらいいのではないか」という。「起爆剤になるものが必要だと思います。個人的には、子供的にウケる『ミニ四駆』的なものが必要だろうと思います」。また、一般的な人を惹きつけるためには、これまでに行なわれていないようなアプローチもあったほうが良いのではないかとも語る。このあたりは、「ROBO-ONE」や「ロボファイト」だけではなく、ホビーロボット業界全体が抱える課題でもある。


『少年心』をくすぐる作品

 これまでのゲームとは違った意味で「リアル」な「ロボットバトル」が楽しめる「THE ロボットつくろうぜっ!」。続編の可能性はあるのだろうか。「ぜひやりたいとは思っています。次回は実際にROBO-ONEに出ている人たちのロボットにも登場してもらいたい」と前田氏は語る。ゲームの売れ行き次第ということだろう。

 最後に、もう一度どんな人にプレイしてもらいたいか伺った。

 「子どものころにロボットが活躍するテレビ番組を見ていて、ロボットが好きな人は多いと思います。このゲームでは、最初はもどかしさを感じながらも、ロボットを製作して、バトルすることができます。『少年心』をくすぐる作品だと思うので、多くの人にプレイしてもらいたいと思います」(前田氏)

(c)2006 HuneX
(c)2006 D3 PUBLISHER


URL
  ディースリー・パブリッシャー
  http://www.d3p.co.jp/
  THE ロボットつくろうぜっ! 特設サイト
  http://www.d3p.co.jp/robotsuku/
  【2006年8月4日】D3パブリッシャー、自作ロボットで戦うSLGアクション PS2「SIMPLE 2000シリーズ Vol.104 THEロボットつくろうぜっ!」(GAME)
  http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060804/robo.htm


2006/09/15 16:41

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