政治

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

大連立協議:混迷、政局ドラマ 有権者「多様な意見を」

 自民党と民主党の2大政党による「大連立」。2日夜、東京・永田町を震源とした構想は、週末の列島を揺さぶった。民主党の回答は結局、NO。巨大与党誕生は一応消えたが、混迷する政治ドラマに有権者は注目した。

 仕事を終えて繰り出したサラリーマンやOLでにぎわう東京・新橋。東京都品川区の会社員、今井真由美さん(29)が「一緒になったら野党の意味がなくなるし、小沢さんも自己主張しにくくなると思う」。横浜市鶴見区の会社員、内山正さん(34)は「事実上の一党体制になれば悪い方向に進んだ時が心配」と語った。一方で、埼玉県菖蒲町の会社員、小林和代さん(50)は「与野党がばらばらの状態が続くのは頼りない。日本の立場を明確に対外的に示すには(大連立も)一つの方法だと思う」。

 賛否の声は全国各地でも聞かれた。兵庫県尼崎市の会社員、藤田真二さん(42)は「連立には反対だ」と言い切る。「異なる立場の人が意見をぶつけ合うのが政治。大連立をしてしまうと、さまざまな国民の意見が反映されなくなる」と、オール与党化を危惧(きぐ)。福岡市中央区の主婦、新村敬子さん(38)も「もともと主義主張が違うのにすりよるのはおかしい」といぶかった。

 しかし、愛知県稲沢市の大岡祥子さん(26)は「(首相の)連立の打診はポリシーがないが、連立政権が実現すれば経済は安定するかもしれない」と理解を見せた。

 結局、民主党は福田首相の打診を受け入れないことを、時を置かず発表した。連立構想は一気にトーンダウンした。

 札幌市北区の北海道大2年、菊池航紀(こうき)さん(21)は「福田さんは本気で言ったとは思えないが、歩み寄りの姿勢を見せたかったのでは。もし、実現したら自民党がやりたい放題になるところだった。民主党が断って良かったと思う。民主党は単独で政権を取ってほしい」。京都市伏見区、美術館勤務、瀬戸圭子さん(60)は「民主党は受けないと思っていたので正直ホッとした。それぞれの党の立場で議論し、暮らしが良くなるように努力してほしい」と語った。

 名古屋市名東区の会社員、梶原誠治さん(26)は、言葉に力を込めた。「民主党の拒否は当然の行動。政治に透明性がなくなる。連立したら日本の政治はおしまいだ」

 ▽政治評論家、浅川博忠さんの話 2大政党のトップ同士が密室で大連立を話し合うこと自体、本来あってはならないこと。福田康夫首相は今月予定されるブッシュ米大統領との会談前に、ここまでやったとアリバイを作りたかったのだろう。小沢一郎代表は福田首相のメンツを考え打診を持ち帰ったのでは。連立をけったことで国民の理解を得られるし、福田首相と長時間話し合ったことで首相がどこまで困っているのか、腹の内も探れたはず。解散に向けて今後の政治スケジュールも読みやすくなる。小沢代表の優勢勝ちだろう。

 ▽岩井奉信・日大法学部教授(政治学)の話 今の自民党では解散しても勝ち目がない。相手が小沢さんではだましもごまかしもきかず、政権運営に行き詰まった福田首相は「いっそのみ込んでしまえ」と一か八かの賭けに出たのだろう。夏の参院選に勝ち、次の総選挙で政権奪取を狙う小沢さんが福田首相の提案をけったのは当然であり、国民の選択肢を確保する上でも大連立は取るべき道ではない。ただ、自民党が解散を先延ばしすれば民主党も失速しかねない。福田、小沢両氏の我慢比べはしばらく続くのではないか。

 ▽漫画家、やくみつるさんの話 民主党が持ち帰ったこと自体が驚きで、一瞬ヒヤッとした。昔の社会党と違って、政権交代の可能性が出てきたところなので、言下に拒否すると思っていた。受け入れるメリットはないので断ったのは当然のこと。福田首相は「政策実現のため」と言っているが、民主党内を混乱させようとしたのか。自民党の懸命さを訴えようとしたのか。ひとこま漫画にするとすれば、密室で福田さんが小沢さんに土下座している構図。真摯(しんし)さよりも、そこまで追いつめられているのかという自民党の弱体化を印象づけた。

 ◇党本部ごった返す

 ボールを投げられた形の民主党本部。小沢代表を囲み役員会が行われた部屋の前には記者やカメラマンら30人以上でごった返した。午後9時20分ごろ役員会は終了し、小沢氏が報道陣の取材に応じた。「誠意あるご対応を頂きましたけど、結果としては(連立は)できませんと福田総理にお伝えしました」。ゆっくりとかみしめるような口調で、つとめて穏やかに振る舞った。

 馬淵澄夫衆院議員は「政権交代を目指しているのだから、当然でしょう。小沢さんがブレるとは思ってません。(福田首相は)相当参ってるんでしょうね」と話した。

 一方の自民党本部。姿を見せた外交防衛委員会理事の山本一太議員は、開口一番「びっくりした」と語った。この日も防衛省問題をめぐって野党と攻防を繰り広げたばかり。「福田さんの言う『新体制』の意味が分からないから軽々しくはコメントできないが、乱世が近いという僕の読みは当たるかも」と話した。

毎日新聞 2007年11月3日 0時30分 (最終更新時間 11月3日 2時25分)

政治 アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報