県警本部長“圧力”に県幹部ら猛反発 捜査費調査で
圧力か、忠告か―。県が進めていた県警捜査費執行実態に関する調査結果の公表をめぐり、鈴木基久県警本部長が「これを公表すれば知事は危うくなる」「取り扱いを慎重にした方がいい」と橋本大二郎知事に述べた発言が波紋を広げている。発言が明らかになった十八日、調査を進めた県の幹部職員らは一様に「警察権力による脅し」と猛反発。県議会からも「知事選も近い時期に気持ちの悪い発言だ」などと疑問視する声が相次いだ。
鈴木本部長が橋本知事に圧力めいた発言をしたのは十三日の夕方。同知事はそのわずか三十分後、調査を担当した会計管理局と総務部、さらに秘書課や県政情報課の幹部ら十数人を緊急招集した。知事は淡々とした口調で鈴木本部長の発言内容を伝えたという。
ある幹部職員は「(本部長の発言内容を)聞いた瞬間、カッとなった。すぐに招集を受けたので公表方針の変更があるのかと感じた」。秘書課サイドも「本当に調査内容は大丈夫かと心配になった」と、本部長発言が相応の重みをもって受け取られた様子を説明する。結局、調査に当たった職員らが調査手法を説明し、「粛々と」公表する方針になった。
鈴木本部長の真意はどうあれ、県幹部らの受け止めは「脅し」「圧力」で共通している。
取材に対し、県幹部らは「警察権力の政治家への脅迫。けしからん発言」「完全な脅し。捜査費問題に対する県警のごう慢な考え方が凝縮されている」と口をそろえて反発。ある幹部は「暴力団が『おたくにも小さい子どもさんがいるよね』とニヤニヤしながら言うのと同じだ」と強い憤りをあらわにした。
波紋は県議会にも。ある自民党県議は「まだ読み込めていないが、県の調査報告は新たな事実もなく薄っぺらな印象。知事もこれ以上、打つ手はない」としながら、「発言が本当なら、知事選を控えた時期に気持ちの悪い発言」。別の保守系会派の県議は「何が危うくなるのか、真意が分からない。あの本部長にしては不用意な発言だと思わざるを得ない。失言の部類だとは思うが…」。
共産党県議は「知事への脅しにより警察権力の体質が明らかになった。内部調査結果もマスキング(黒塗り)で県民に真実を隠してきた県警が、そんなことを言える立場にはない」と批判した。
市民オンブズマンの一人は「高知県での追及はしつこいし、厳しいし、うっとうしいんでしょう。県警の悪あがき。往生際が悪い」。
昨年二月に県警捜査費の一部を「違法・不当」と認定する特別監査報告を出した県監査委員事務局の幹部は「何ともコメントのしようがない」としながら、「行政の人間の発想にはないものの言い方だ」と続けた。
【写真】県議会散会後、取り囲む報道陣に県への反論姿勢を強調する鈴木基久・県警本部長(右)=県議会棟
県警火消しに躍起 捜査費での本部長発言
県警捜査費に関する県の調査結果公表をめぐる橋本大二郎知事に対する鈴木基久県警本部長の発言が波紋を広げた十八日、県警幹部は本部長発言が大きく問題化す るのを避けようと“火消し”に躍起。当の鈴木本部長は県警の内部調査への自信を示した県議会散会直後とは一転、発言が明らかになって以降は報道陣の求める記者会見には応じず、「知事とそういうような話をしたことは事実。内部調査には自信を持っており、調査結果の取り扱いは慎重にされた方がよいという趣旨だった」とわずか三行の短いコメントを発表しただけだった。
県警総務課の担当者は本部長発言が伝わった当初、「そんなことを(知事が)言ったの?」と驚いた表情。報道陣からの会見の申し入れに対し、「本部長は『県の調査が間違いであれば知事が困るのでは、との意味合いで助言した』と言っている」と硬い表情で釈明した。結局、会見の設定には応じず、本部長発言に圧力の意図はないと繰り返した。
報道陣は「発言は知事への圧力と受け止められるのでは」「発言は適切か」など八項目の質問を文書で提出し、再度強く会見を要請したが、鈴木本部長は同日夕、県警本部を後にした。
(2007年6月19日・朝刊) |