福田康夫首相と民主党・小沢一郎代表の「大連立騒動」は、自衛隊海外派遣の恒久法制定論議がきっかけだった。1日のテロ対策特別措置法期限切れで、インド洋での海上自衛隊の給油活動が中断。連立協議で「より積極的な国際貢献策を目指す」という大義名分により、事態を打開しようという窮余の策だった。
関係者によると、小沢氏は2日の党首会談で「自衛隊の海外派遣には恒久法が必要だ。連立協議で恒久法について協議するなら、給油再開のための新テロ特措法案にも、これまでの反対姿勢を改め、成立に協力する」との考えを述べたという。
福田首相も恒久法には賛成の立場。会談をいったん中断し、自民党の伊吹文明幹事長らに「法制上詰めないといけないので、時間をもらうことになった」と言い残し、首相官邸に引き返した。
給油活動は、国際的な「テロとの戦い」における日本の活動の柱だった。善後策もなく中断に追い込んだ小沢氏の政策判断には、米国からも批判が出ていた。
小沢氏は給油活動には「直接の根拠となる国連決議がない」として反対する半面、アフガニスタン国内に展開している国際治安支援部隊(ISAF)の民生分野への参加を提唱。参加に必要な自衛隊派遣には前向きだ。
恒久法制定協議が、直ちに給油活動賛成に転じる理由にはならないが、小沢氏は連立政権という成果と引き換えに、給油再開容認を政治決断する考えだったとみられる。
しかし、連立協議自体が民主党内の予想外の猛反対でつぶれると同時に、恒久法論議の芽も消えた。新テロ特措法案の行方は、再び元の混迷に戻った。【伊藤智永】
毎日新聞 2007年11月3日 1時40分