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2007年11月3日

 能登半島地震で被災した高齢者の半数以上が心身の不調を訴えている。金大の現地調査で分かった

頑張って、と声を掛けたくなるが、おざなりな激励は、苦境と闘う人にどれだけ通じるか。先般、本紙にエッセーを連載する海老名(えびな)香葉子(かよこ)さんが仮設住宅を慰問した。その時の取材記者から聞いた話。海老名さんも請われて色紙に「頑張って」と書いたが、その前に「泣いて、笑って」と付け加えた。林家一門を率いての訪問に、被災者は「その通りやね」とうなずいたという

金沢出身の仏教思想家・鈴木大拙にあこがれて禅修行に来た米国人の若者からは、「頑張っては大嫌い」と聞かされた。「死ぬ気で頑張れ」と言われ、死ぬ積もりで来たのではない、と激しい反発を覚えた、と語った

苦しむ人をどう励ますか。難事である。夫の三平さんを失い、弟子を抱えて苦労する海老名さんに、雑誌の人生相談の話がきたことがあった。ためらう海老名さんに、義母が言葉をかけた。「おやんなさい。悩みは本人が解決するものよ。あなたは聞き上手になればいいの」

能登には、聞き上手のお年寄りが、たくさんいるはずである。


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