東京駅の一つ手前にあるのが有楽町駅だ。有楽町といえば、年配の人ならフランク永井の大ヒット曲「有楽町で逢(あ)いましょう」を思い浮かべるだろう。東京タワーが着工した昭和三十二年に世に出た。もともと駅前の大手デパートのキャンペーンソングだったというから意外だ。そのデパートも既になく、家電量販店に姿を変えた。
有楽町駅や地下鉄の有楽町線のように「有楽町」という名称はあっても、駅前は雑然とし、街としてのアピール度はいまひとつ。周りの銀座や丸の内がにぎわいのスポットとして脚光を浴びる中、どこか取り残されたようだった。
それが今や大変身を遂げた。十月初め、駅前の再開発事業が完成したのだ。若者に人気のデパートを核とする商業、オフィスなどの複合ビルが誕生した。計画が決まってから三十年がかりという。銀座に向かう沿道には新しいファッションビルも次々に完成しており、開業人気もあって大変な人出だ。
特筆されるのは鉄道の高架下を通り抜けていた車道がなくなり、駅前に大きな広場ができたことだ。車より人を優先したことが、にぎわいの場としての魅力アップにつながっている。新しい街の愛称は「有楽町イトシア」という。訪れる人々にとって“愛(いと)しい街”になるようにと願って付けられた。
今は行き交う人で大混雑だが、落ち着いてくれば、ゆったりと人を待ち、街を楽しむことができそうだ。「有楽町で逢いましょう」が再び、合言葉になりそうな気がする。
(東京支社・八木一郎)