旧ソ連に抑留され、一九九七年に半世紀を経て帰国した蜂谷弥三郎さん(89)の妻、久子さんが二十六日午後六時三十四分、虚血性心不全のため鳥取市内の自宅で死去した。九十歳。
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昨年6月の「金婚・ダイヤモンド婚記念祝賀式」で祝福を受ける蜂谷弥三郎さんと久子さん=鳥取市青谷町内 |
自宅は同市気高町勝見六四二ノ一〇。葬儀・告別式は二十八日正午から自宅で。喪主は弥三郎さん。
二人は一九四二年十一月に結婚。しかし、弥三郎さんは結婚後、旧ソ連兵にスパイ容疑で連行され、強制労働を強いられた。久子さんは夫の帰りを待ち続け、五十年余りの年月を経て再会。久子さんの半生はドラマにもなった。
久子さんは二十六日午後から急に悪寒を訴え、弥三郎さんが抱きしめながら体をあたためている時、腕の中で息を引き取ったという。
「『お父さんあたたかいね』の言葉が最後でした。やっと再会したと思ったら、また別れるなんて…。悲しくて心もとない。互いにいたわり合い、愛を感じる日々でした」。弥三郎さんは目に涙を浮かべ、いつも優しく振る舞ってくれた久子さんを思った。
長女の久美子さん(62)は気丈な母だったと振り返り、「(弥三郎さんが)帰ってきたのでここまで長生きできたのだろう。母は幸せ者です」と声を詰まらせていた。