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調書漏えい:言論界へ「見せしめ」的効果危惧する声も

保釈されて奈良少年刑務所を出る崎浜盛三被告(左)右は弁護士=奈良市般若寺町で2007年11月2日午後6時28分、小関勉撮影
保釈されて奈良少年刑務所を出る崎浜盛三被告(左)右は弁護士=奈良市般若寺町で2007年11月2日午後6時28分、小関勉撮影

 奈良県田原本町で母子3人が死亡した放火殺人事件を巡る秘密漏示事件で奈良地検は2日、中等少年院送致となった長男(17)の精神鑑定をした医師、崎浜盛三被告(49)1人を起訴する一方、調書を引用した本「僕はパパを殺すことに決めた」の著者、草薙厚子さんは不起訴にした。言論や出版の自由と少年法を巡って議論を呼んだ強制捜査は終結したが、識者からは言論界に与えた「見せしめ」的効果を危惧(きぐ)する声が上がり、長男側は「草薙さんの不起訴は納得いかない」と憤るなど、関係者の心にさまざまな傷や思いを残した。

 この日保釈された崎浜被告は午後6時半ごろ、拘置されていた奈良少年刑務所(奈良市)を出た直後、取材に応じた。神妙な表情で、終始うつむきがちに「具体的なことはすべて裁判で話します。裁判の精神鑑定からは身を引きたい」と淡々と語った。

 崎浜被告が勤務する京都市内の病院職員は「崎浜先生には1日に30人以上の診察をしてもらっていた。予想以上に拘置が長く、一日でも早く病院に戻ってきてほしい」と話した。

 捜査で研究室などを家宅捜索された京大教授(49)は、奈良地検に「関与なし」と判断された。教授は「いきなり強制捜査が入り、精神的、肉体的ダメージが大きかった。報道にも苦しめられた。奈良地検は公権力を使う限り、慎重にしてほしかった」と話した。

 本を発行した講談社は「いかなる形であれ出版・報道に対する公権力の介入は許されるものではありません。逮捕・起訴された鑑定医の方に深くお詫(わ)び申し上げるとともに、社会的責任を果たすべく意義のある出版活動を続けてまいります」と草薙さんとともにコメントを出した。

 一方、長男の祖父(66)は「崎浜被告は当然処罰されるべきだが、草薙さんの不起訴は納得いかない。孫の更生を妨げて、どう責任を取ってくれるのか。親子関係を修復することで更生できるのに、父と子の信頼を傷つけるようなことをした」と憤りを隠せない様子だった。

 少年審判で長男の付添人を務めた浜田剛史弁護士は「少年法の精神を社会が再認識できたのではないか。少年に更生の機会を確保するためにも、関係者は二度と繰り返さないよう反省してほしい」とコメントを出した。民事訴訟は関係者の動向を見ながら検討する。

毎日新聞 2007年11月2日 20時22分 (最終更新時間 11月3日 0時19分)

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