イケベ
(以下IKB):
本日は宜しくお願い致します。
始めに、今までの経歴及び現在の役職、お仕事内容をお聞かせ頂けますか?
 

マイク・ボルツ氏
(以下M.V.):

い、ナッシュビルに住み始めたのは1979年からです。
最初はジョージ・グルーンのショップで4年間ほど、ギターの修理や製作をやっておりました。
そんな時、Gibsonはカラマズーの工場を閉鎖し、ナッシュビルの工場に移転する為にギター製作に詳しい人間を探していたので、私はGibsonで働くことにしたのです。それは1984年の事ですね。
Gibsonに入った当初はカスタムショップの立ち上げに関わっていました。スタート時のカスタムショップは、それはもう小さなもので、作業台も3つしかなかったんですよ!そんな小さな所からカスタムショップも始まっているのです。
その後は色々な仕事をしましたね、ほとんどのディビジョンに関わりましたが、やはり一番印象深いのはチェット・アトキンスとの仕事です。チェットとは個人的にも親しくしておりましたので、Gibsonとチェットとの関わりをサポートしました。
1998年から2000年ぐらいまではカスタムショップのプロダクト・マネージャーとして働き、その後はアーティスト・リレーションの仕事もしました。近年ではEpiphoneのアコースティック部門で、「Masterbilt」シリーズの立ち上げに携わりました。

そしてこの一年ほどはモンタナ・ファクトリーのプロダクト・マネージャーとして働いております。
 
IKB : アコースティックのビルダーとしても有名だと伺いましたが?
 
M.V.: サンキュー!(笑)
若い時には「ロバート・ベン」というアメリカでは有名なギター製作の学校で学び、その後も腕を磨いてきました。
やはり一番印象に残る仕事はチェット・アトキンスのギターを製作した事ですかね!
今はモンタナ・ファクトリーで、皆さんもご存知のレン・ファーガソンや多くの優秀なスタッフと一緒に仕事をする事に、非常にやりがいを感じています。世界レベルでもトップクラスのクラフトマン達ですので、自分としても非常に励みになります!
 
IKB : 現在、Gibsonアコースティックのアメリカ市場で良く売れているモデルは?
 
M.V.: んー、そーですねー、 J−45、SJ−200、J−185、Songwriter DLXなどです。
あとCJ−165も新しい機種ですが非常に反応が良く、人気が出ています。
また、マスターミュージアムと言う年間12本しか製作されない機種がありますが、非常に高価なギターであるにもかかわらず、既に今年度の製作分は完売となっておりますので、このようなハイエンドなギターの人気も高いと思います。
今後はレン・ファーガソンの担当も広がって、彼を中心にチームを作り、クラフトマンの育成に努めていこうと思ってます。 
 
IKB : カスタムショップ部門が広がると言うことですか?
 
M.V. : はい、そのとおりです。
やはり、カスタムショップ製品に対する反響はとても高いですから!
 
IKB : Gibsonアコースティックのメイン購買層をお聞かせ頂けますか?
 
M.V. : おー、難しい質問ですね!(笑)
私たちの作る製品は安い値段帯の物では無くハイクオリティーな部類に属しますが、大学生の方や年配の方まで幅広い支持を得ていますから、購買層を特定するのは難しいです!
スタンダードなモデルからカスタムショップまで様々なモデルがありますから、メイン購買層も様々ですね。
 
IKB : Gibsonアコースティックは主力の6ラインを中心としたラインナップ展開を行っておりますが、新たなラインやモデルの展開等はございますか?
 
M.V.: もちろん新しいモデルの開発も行っていきますが、6ラインを中心とした基本ラインは変わらないですね。
私が最初に考えた事は、やはり基本に忠実でありながらも、更に質を高めていくという事です。
もちろん進歩させる事も考えており、CJ−165のような新しいスタイルも開発しましたが、J−45やSJ−200などの皆さんに親しまれているモデルが多くありますので、ガラリと変えてしまう事は考えておりません。
また、お客様からの意見を取り入れて、それを製品に反映させる事はあります。去年から今年にかけて色々な意見を集めており、日本のマーケットからも意見を聞きました。
より日本のユーザーの方にプラスになるにはピックアップを搭載するのが良いのではないかとの意見がありましたので、各ラインの主力モデルにはピックアップを搭載するようにしました。
   
IKB : 昨年、モンタナ工場を見学させて頂き、伝統を守りつつも効率の良い作業風景に感銘を受けましたが、製作スタイルは確立されたのでしょうか?それとも今後、更なる品質の追求の為の作業手法の変更等はございますか?
 
M.V.: 基本的には現在の作業スタイルを維持していきますが、新たな製作機械が開発され、それにメリットが有れば考える事があるかもしれませんが、無理やり何かを変える事は考えておりません。
 
IKB : では、アコースティックギターを製作する上で、重視している点はどこでしょうか?
 
M.V.: まず、トーンが一番大事です。
もちろん弾き易さもですね。そして美しいルックスもやはり大事です。ギターはアートでもありますからね!
その為に、良質で音響的にも優れ、更に見た目の美しい木材は常に捜し求めています。
上質なスプルースはもちろん、フレイムやキルトメイプル、ローズウッドやコア材などですね。
 
IKB : モンタナ工場では上質な木材を数多くストックしていますが、木材の確保やシーズニング方法で特に重視している点はございますか?
 
M.V.: 木材の選定にはとても気を使っています。
フィギアードの美しい杢目はもちろん、強度的に見て木目の綺麗に通った材であるかや、タップトーンと言われる材を叩いてその材の鳴りを読み切る事も重要です。トップ用のスプルースやシダーなどの材ですと、それは特に重要です。
木材のストックではシーズニング専用の部屋である程度乾燥させた後に、風通しの良い場所で井桁状に材を積んだりしてストックしております。環境や工程を見極めてですので一概には言えませんが、木材を良い状態に保つように一貫した管理をおこなっています。
 
IKB : 以前にモンタナ工場を見学させて頂いたのですが、行く前の想像していたよりも小さな工場で、昔ながらの機械を使い、ハンドメイドの工程も残しと、全世界に対してギターを製作するのは大変じゃないかと思ったのですが?
 
M.V.: はははっ!(笑)
本当に、そーだね! どうやって造っているのかね!(笑)
たしかに、それなりの本数は造っていますが、大量生産とは言えないですね。他のブランドですと、もっと大きな工場で多くのギターを造っている所もありますからね。ただ、そのようなブランドと私たちの違いはですね、大きな工場で大量に作る所は在庫としてストックしているギターも多いのですが、私たちの工場では必要な本数だけ造り、ほとんど在庫としてストックしているギターが無い事なのです。無理して大量生産するよりも、求められているギターを大事に造りたいと思っていますから。
 
IKB : では、少し個人的な質問ですが、一番お好きなGibsonアコースティックはどのモデルですか?
 
M.V. : それは答えるのが難しいなー!(笑)
どのモデルも好きだから、一つに絞るのは難しいよ!それに時々好みも変わるからね!!
働き始めた頃はJ−185が好きだったけど、今はAdvanced Jumboかな。J−45も好きだね!
あと、最近興味があるのはL−00かな!
 
IKB : では、最後に日本市場に対する印象をお聞かせ下さい。
 
M.V.: 日本の市場は、世界的にみてもトップクラスですよ!
日本のお客様はギターに対する知識が非常に深いですから。高いレベルで良いギターを求める方が多いですから、製作側としたら厳しい目を持ったお客様とも言えますが、その分熱心でもいらっしゃいますので、日本での反響が良いとこちらの励みにもなります。私たちの製品をとてもよく理解して頂ける大切なお客様が多くいらっしゃいます。
 
IKB : 本日はありがとうございました。
 

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