「待たされた方の負け」は今年で終わりにしませんか、NPBの偉いさん。
日本テレビが勝利監督インタビューの途中でさっさと中継を打ち切ってしまったので断定はできないのだが、中日はクライマックスシリーズを全勝で通過し、日本シリーズへの出場権を獲得しても、落合監督の胴上げをしなかった(少なくとも、試合終了直後には)。選手がみなベンチに引き上げ、インタビューに呼び出されるまで、落合はグラウンドに出ようとはしなかった。
たぶんこれは落合監督の意思なのだろう。もともとパ・リーグがプレーオフ制度を導入した時から批判していた彼のことだから、勝っても胴上げをしないことでレギュラーシーズンに敬意を示したのではないかと思う。
第3戦は決着が懸かっていたこともあって終盤まで盛り上がったが、9回裏、先頭で出塁した大道の代走で一塁に立った古城の馬鹿げた走塁ミスがジャイアンツの希望に冷や水をかけた。第2ステージを通して見れば、ジャイアンツ打線は中日の投手陣の前に封じ込まれ、投手陣はここぞという場面で打ち込まれた。得意の空中戦でも及ばなかったのだから、そこまでの力量だったのだろう。ファンとしては、そう思うほかはない。
それはそれとして、プレーオフ制度としては、またしても「待たされた方の負け」という結果になった。
現行方式の下で行われたパ4回、セ1回のプレーオフ、および3回の日本シリーズにおいて、「待たされた方の負け」の陥穽を免れたチームは北海道日本ハム(2度)だけだ。
これほど偏った結果が残っているのだから、もはや、「待たされた方が不利」という推測は事実とみなしてよさそうに思う。NPBはそろそろ首位チームの日程上の不利を解消することに本気で取り組んでもいいんじゃないだろうか。
幸い、両リーグの足並みが揃ったことで、日本シリーズにおいては従来ほど大きな差はなくなった。とすれば、次の改革へのステップを考えてもよい時期だろう。
贔屓チームが負けたからそういうことを言い出すのか、と言われそうだが、この件に関しては以前から気になっていて、2年前にもこのblogでかなり突っ込んだ議論をしている(<待つ身はつらい。>および<今年できたはずのプレーオフ改革。>)。
私が思いついたもっともシンプルな解決策を<今年できたはずのプレーオフ改革。>から再録しておく。両リーグのペナントレースを最終日を決めて一斉に終了し、2日後から第1ステージを開始、終わったら即座に第2ステージに移る、というものだ。具体的には次のようになる。
0日目 リーグ最終日
1日目 プレーオフ開催準備
2日目 第1ステージ第1戦
3日目 第1ステージ第2戦
4日目 第1ステージ第3戦
5日目 第2ステージ第1戦(以下略)
今年のジャイアンツには14日間の空白があったが、これなら4日で済む。5日目を休みにして6日目から第2ステージを始めるくらいでもいいかも知れない。
<第1ステージから勝ち上がるチームにとってはタイトな日程になるが、1位チームにさしたるアドバンテージがないのだから、そのくらいのハンデがあってもいいだろう(初戦から連勝すれば4日目は休めるし)。シーズン中でも6連戦くらいは普通にやっているのだから、過重な負担になるとは思えない。>と当時は書いたが、今でもこのくらいが妥当だと思っている。
そんなに準備期間がなくて営業が間に合うのか、というのは当時ひっかかった課題のひとつだが、この2年でチケットのネット販売はだいぶ普及したのではないかと思う(単に当時の私が知らなかっただけかも知れないが)。e+ではすでにジャイアンツと中日が主催する日本シリーズの先行販売受付を終えている。ぴあやe+などのチケット販売サイトでは、ネットで申し込んでカードで決済、発券はコンビニで、というシステムが出来上がっている。これなら短期間でもチケットをさばくことは可能だろう。現にMLBでは何年も前から普通にそういう日程でプレーオフをやっていて、どの試合もよく入っている。
ちなみに私の手元には、そのようにして購入したクライマックスシリーズ第2ステージ第4戦のチケットがある。そして、試合終了から1時間も経たないうちにe+から「払い戻しのお知らせ」と書かれたメールが届いた。
ここまでの論旨からすると、この手回しの良さを讃えるべきなのだろうが、今の私には、どちらかというといまいましい。せめて一晩くらい待ってから言ってこいよ、という気分だ。もちろん、e+に非があるわけではないのだが。
追記(2007.11.1)
VIP系というのだろうか、いろんなサイトにリンクを張って紹介するサイトのひとつに、このエントリがリンクされて、こんなコメントがついていた(10月30日分)。
<まあ、わからなくもないですが。
今回の日本シリーズぐらいはまじりっけなしのストレートな視点で見て欲しいですねえ。
これで「日ハムが待たされたから負けたんだ」とかになったら胸糞悪いですよ。>
人の書いたものをあれこれ言うわりには、トラックバックも送ってこなければコメント欄もないので、ここで感想を述べることにする。
私はエントリ中に「両リーグの足並みが揃ったことで、日本シリーズにおいては従来ほど大きな差はなくなった。」と書いている。事実、今年についていえば中日と日本ハムの差は2日しかない。従って、日本シリーズについて「日本ハムが待たされたから負けたんだ」などと主張するつもりは毛頭ないし、してもいない。
こちらが書いてもいないこと(そして、論旨が読み取れさえすれば、そうでないと推論できること)について曲解されて「胸糞悪い」などと書かれるのは、とても胸糞が悪い気分だ、と申し上げておく。
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コメント
いつも楽しみに読ませてもらってます。
このプレーオフ制度、ムリヤリにシーズンを「盛り上げよう」という意図がまずイヤです。
どうせやるならメジャーの地区制度にならってリーグ優勝を決め、シリーズへなだれ込むのが好きですね。
日本のやり方はワイルドカード以上に腹の立つやり方です。
敗者復活は、社会生活においては良いことだけど、ことスポーツに関しては敗者にファイナリストの上をいくチャンスを与えるべきでない。
「次」頑張ればいい。
画面で見ていただけなんでアレですが、ジャイアンツ各選手の「淡泊さ」が気になりました。
ホークス、マリーンズ、ファイターズがそれぞれ見せてくれた1球ごとの緊張感とは比べるべくもなく、と言っては言い過ぎでしょうが、この3試合、巨人の選手から熱気というかキモチというか良く見えずズルすぎる言い方ですがチームとして戦ってないような。
レギュラーシーズンの最終盤、何としても1位になるという強い意思を持って戦って、久々に頼もしいジャイアンツを見たような気がしたのですが、あれで燃え尽きてしまったんでしょうか、まだ何も手に入れていないのに。
それにしても、放送時間が微妙だったにせよ、凄いところで中継切りますね日テレは。
ラグビーワールドカップの不始末も含め、スポーツに対するリスペクトなんてカケラも持ってない事が良く分かります。
視聴率の道具でしかない事を露骨に示す日テレ他のテレビ局(NHKもメジャーの方が軸足入ってるし)の姿勢が透けて見え、それがまた「淡泊さ」を増幅してしまうのかもしれません。
もっとも、TBSみたいに露骨に変なブームを作り上げるのもカンベンして欲しいですが。
投稿 T.U | 2007/10/21 00:22
>T.Uさん
こんにちは。
>このプレーオフ制度、ムリヤリにシーズンを「盛り上げよう」という意図がまずイヤです。
>どうせやるならメジャーの地区制度にならってリーグ優勝を決め、シリーズへなだれ込むのが好きですね。
ここで書いているのは対症療法で、根本的にはおっしゃるような矛盾をはらんだ制度であることは否めません。「メジャーの地区制度」にならうなら、今の2リーグを廃して4チーム×3地区でそれぞれ優勝を競うか、あるいは両リーグとも2チーム増やして4チーム×2地区×2リーグにするか、いずれにしても抜本的な改革が必要になりますね。NPBには中期展望としてそこまで視野に入れて欲しいものですが、そこまで考える立場の人が…。
>ラグビーワールドカップの不始末
これ、知りませんでした。調べてみたら、私が海外出張に出発する飛行機に乗っている間の出来事だったようです。数分遅れの録画中継をライブに切り替える際に、トライ光景をカットしてしまったんですね。リスペクトはともかく、日テレは野球とサッカーで数をこなしてきたので技術は高いと思っていたのですが、どうしてしまったのか。
投稿 念仏の鉄 | 2007/10/21 11:16
今年の巨人には期待していたのですが、最後の最後、脆さが出てしまったなあと言う印象ですね。(その前の大道ヒットが凄く嬉しかっただけに)古城のボーンヘッドにはガックリしましたが、その後、木村拓也打席で、なんの手も打たなかった原監督にも、ちょっと失望しました。
日本テレビは、この大事な試合中に、番宣やってましたね。球場にドラマの出演者を招いて、インタビューをしていたのですが、そのインタビュー中に谷繁のホームランが飛び出してしまうという間の悪さでした。
投稿 SOUTHK | 2007/10/22 01:39
えー。もう言うまでもなく「プレーオフの理不尽に泣かされ続けた」ホークスのファンの馬場です。鉄さんのご趣旨に全面的に賛成します!巨人ファンが本気で動いてくれれば、きっとNPBも動きます。(というか「ナベツネの一言」で事態が動きそうでコワイ・・・。ま、このケースについては「結果オーライ」を許容します。)
で、ただひたすら「プレーオフを面白くする」というだけの趣旨で下らないことを考えてみました。
実現可能性は、まったく考慮していません(笑)。
1)12球団を4つずつ3つのディビジョンに分ける。
2)ディビジョンの分け方は、基本的に「くじ引き」(ただし人気球団の分散は、考慮。)
3)あとは基本的にメジャーといっしょ。ディビジョン相互の「交流戦」は3分の1くらいしてもいいかな。
4)ディビジョン優勝チームと2位勝率トップのワイルドカードで4チーム勝ち抜きの「日本シリーズ」。
こういうプレーオフだと「待たされ」も理不尽感も少ないと思います。
結果的に2リーグ制を解体してしまう案ではありますが(笑)。
投稿 馬場 | 2007/10/22 18:48
>southkさん
や、しばらくです。
シーズン終盤のジャイアンツは、しぶとい、いいチームになったと思っていたんですがね。まだ足りなかった。過去3年間で2度優勝しているチームと、その間ずっと低迷していたチームとでは、こんなに差がついてしまうものなんですね。
今のジャイアンツは「新生」ではあっても決して若いチームではないので、来年に向けてさらに変革が必要。また他所から分捕ってくるような短絡した方法を選ばないで欲しいものです。
>馬場さん
ここまでのところ、ジャイアンツのフロントが14日の空白について文句を言っているという報道は見当たりません。実行委員会などで問題提起をするにしても、冷静な議論を期待しています。
私が上のコメントに書いた「今の2リーグを廃して4チーム×3地区でそれぞれ優勝を競う」というのが、だいたいご意見と同じ考えです。現行方式でもう何年かやってみたら、そういう案にもリアリティが出てくるかも知れませんね。
投稿 念仏の鉄 | 2007/10/22 23:30
いつも興味深く読ませていただいています。
早速ですが、「今の2リーグを廃して4チーム×3地区でそれぞれ優勝を競う」制度では1週間少々で、また同じチームと対戦することになります。既にマンネリ気味のプロ野球で、そのような制度を導入したら、ますます飽きられてしまうのではないでしょうか。
また、巨人戦を失うことに対して、セリーグ球団から強い反発を受けるのではないでしょうか。交流戦ですらあれ程もめたのに、リーグを分割されては、経営が成り立たない所もあると思います。
個人的には上位2チームのプレイオフが最も公平だと思いますが(巨人が反対するかもしれません)
どんな制度を導入した所で、
1) パ・リーグをセ・リーグの前座にする
2) 大きなスポーツイベントから逃げる
ような変則的な日程を採用するようでは、問題の解決には繋がらないと思います。
投稿 元広島ファン | 2007/10/27 02:18
今の少ない球団数ではキツいですね
場のない有望・再生選手が多い上、選手の給料が高いなら
球団が増やせるように参入障壁を下げて欲しいです・・・
セ・パ2リーグ制の東西2地区でまずリーグ優勝シリーズ
そして日本シリーズなら球団が4増えれば可能ですし
その点、サッカーはチームが多くて羨ましい・・・
野球人口から考えてプロ野球が小さすぎるのは困り者です
投稿 | 2007/10/27 10:36
現行の球団数とリーグ数でプレーオフ制度は私も反対ですが、その中でも日ハムのパ優勝は将来に向けてのほんのわずかな希望です。
正直、あのような戦力で優勝できたのは今の巨人に対する
アンチテーゼでしょう。
もう少し、各チーム育成(選手と指導者共)と球団経営に力入れたらいいのになと思います。
というのは
そもそも1チームに1・2軍含めて登録メンバー70人程度必要なのでしょうか。
野球は9人で試合するから、50~60人程度で宜しいのでは。
で、1シーズンのゲーム数を気候の関係上、1リーグ120試合程度にして
10月にクライマックスシリーズでもやれば
16から18チーム出来て、シーズンやプレーオフ両方
そこそこもりあがるような気がします。
そういう意味において、日ハムの優勝は少し希望が持てますね。
と妄想してみました。
待たされ間は検討の余地ありますが、ゆくゆくは上記の妄想が現実になってほしいなと思います。
ちなみに今の巨人のチームマネジメントではいつまでたってもセ・リーグの代表にはなれず、なったとしてもパ・リーグにボコボコにされますね。
何が弱点でどう育成・補強しようとしているのか
よくわからないです。
しかも迷惑な事に他チームの戦力低下において、思想的に影響を及ぼしている。
泣きたくなります。そういう私は広島ファン
投稿 ころころ | 2007/10/27 16:18
>元広島ファンさん
ご指摘はごもっともかと思います。
私は「今の2リーグを廃して4チーム×3地区でそれぞれ優勝を競う」制度を推奨しているわけではありませんが。
>2007/10/27 10:36の名無しさん
16球団・2リーグ・2地区というのは理想ではありますが、四国アイランドリーグや北信越BCリーグの試合を見ていると、今のまま4球団も増やしてレベルが維持できるのかというのは、なかなか難問だとも感じます。もちろん、経営をどう成り立たせるかという問題もあります。
>ころころさん
球団拡張については上記の通りですが、どうせなら二軍をやめてしまえ、という意見も以前このblogで書いたことがあります。
ジャイアンツのチームマネジメントは、私の見たところ、すでに底を打って多少は希望の光が見えてきた、というところです(このオフに何をやらかすかにもよりますが)。
また、広島カープにとって現在もっとも悪質な敵は、金本を奪い、昨年は公然と黒田に手を伸ばし、今も新井が欲しいと公言している阪神ではないのかな、と傍目には思います。
投稿 念仏の鉄 | 2007/10/29 11:38
ご無沙汰しております。
巨人のプレーオフ、残念だったというよりは無様で悔しかった…という感想です。やれることをやって負けた、という印象は持てませんでした。
さて日程の不公平さなのですが、過去に遡ってみると、プレーオフでなくても90年巨人や02年西武のように圧倒的強さでシーズンを勝ち抜いたにもかかわらず、時間が空きすぎて日本シリーズで惨敗した、と言えそうなパターンはあり、やはり日程が空くのはよろしくないのかもしれないですね。
公平性を問うのであれば、鉄さんの日程を詰める案が最もいいのですが、それをものともしない日本ハムのようなチームが出てきた(かも?)という現状にも興味があります。現行方式をもう少し試してみたら、意外と1位チームが勝ち抜ける率がそのうち高くなるのでは…とも思ったり。
盛り上げを意図としてプレーオフは始まりましたが、個人的にはWBC対策として、短期決戦としての強さを身につけて欲しいです。
投稿 アルヴァロ | 2007/10/31 23:56
>アルヴァロさん
終わってみれば、ただただ中日が強かったというだけのポストシーズンになりました。対戦相手の3球団のファンは、ただただげんなり、というところでしょうか(日本ハムはまだしもいいところもあったけれど)。
>現行方式をもう少し試してみたら、意外と1位チームが勝ち抜ける率がそのうち高くなるのでは…とも思ったり。
たしかにいずれは適応技術が開発される可能性もあるとは思いますが、「マークシート式試験必勝法」みたいな感じで、あまり魅力的な技術ではありませんね…。
投稿 念仏の鉄 | 2007/11/01 21:16