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【社会】

「そこに行けば現実忘れられた」 ホスト通いの被告、思い告白

2007年10月12日 朝刊

◆瀬戸信金横領・懲役3年求刑

 「そこに行けば、すべてを忘れられた」−。ホストクラブに通うため、勤務先の瀬戸信用金庫今池支店(名古屋市千種区)から多額の金を着服したとして、業務上横領の罪に問われた丹羽麻理子被告(27)。十一日、名古屋地裁で開かれた公判で、大村泰平裁判官が「多くの人が関心を持っていると思うけど、ホストクラブに何を求めていたの」と尋ねると、被告は震えた声で答えた。 (社会部・北島忠輔)

 「現実を忘れたかった」。大勢の傍聴人が見守る中、そう続けた。

 同被告は、瀬戸信金の現金自動預払機(ATM)に補充するための現金から計約一億二千万円を着服して、ホスト遊びに使っていたとされる。このうち千二百万円分について、罪に問われた。

 「最初のころは悪いと思っていたが、途中からは分からなくなった」

 同信金には家族も勤務していたこともあり、丹羽被告は「看板を汚してしまい申し訳ない」と何度も口にした。

 ホスト遊びのきっかけは、交際していた男性の代わりに消費者金融から借りた百万円。返済のために「夜のアルバイト」を始めた。その仲間に誘われ、昨年初めに訪れたホストクラブにのめり込んだ。多い時は一晩に百万円以上も使い、借金はあっという間に約六百万円に膨らんだ。

 裁判官からは「ホストも結局は商売。金を払わなければ相手にされないのでは」と聞かれた。それは分かっていた。だからこそ、自分が金を使うことで喜ぶホストの顔を見たくて、いつかは発覚すると分かっていても着服を続けた。

 そうまでして「忘れたかった」現実とは、何だったのか。法廷では、その心の内奥までは明かされないまま、結審した。

 検察側はこの日、「自己中心的で、信頼ある立場を利用した悪質な犯行」と懲役三年を求刑。判決は十一月六日に言い渡される。

 

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