順番に見ていきましょう。とはいっても、このかたの場合、大枠では外してません。ここしばらく、めちゃくちゃな知識をもとにアニメのお金の流れについてネット上で色々書いている人たちを山のように見てきたので、その中にあってはかなりまともに見えますし、実際かなりまともです。
アニメ制作会社の多くは受注生産であり、おっしゃるとおりです。
著作権はほとんど発注側に持っていかれる。その制作会社が製作していないなら、その制作会社には著作権が発生しないので、その意味ではそのとおりです。
現在のアニメのほとんどは「製作委員会」という方式で作られている。はい。そうですね。
特にTVアニメはそうだ。で、この製作委員会が何なのか、意外とみんな知らない。少なくとも劇場用アニメはほぼ製作委員会方式です。ですので、特にTVアニメはそうだ、というのはちょっと違います。瑣末なことではありますが。
製作委員会とは、その作品に出資した人たちが集まった集団で、出資額に応じて作品からの収益を分配したり、あっています。
著作権を分担したりしている。より正確には、著作権を共有しつつ、著作権行使を分担しているです(共有だけで、特に行使の部分では分担しない出資者というのもありますが)。
これを受けた制作会社はその予算でアニメを毎週作って納品する。これがヒットすればグッズの売り上げやDVDの売り上げは、製作委員会に入って、出資比率に応じて製作委員会のメンバーに分配される。実際は、幹事会社の窓口手数料とかそういう細かい話はありますが、基本的にはおっしゃるとおりです。
製作委員会に出資したメンバーが著作権を持っているのである。まったくそのとおりです。この辺を勘違いしてる人たちはよく見かけますね。DVDが売れれば制作会社が儲かる的なオオウソとか(もちろん間接的には儲かるとはいえそうです。ただ、直接著作権使用料という形でお金は入ってきません)。
グッズ・DVDの売り上げも製作委員会に支払われるので、実際にアニメを作った制作会社にはその売り上げでの利益は全く返ってこないという仕組みになっている。おっしゃるとおりです。
つまり、手を動かしてアニメを制作した制作会社は、受注した製品を納入したときに支払われる代金しかその作品での利益が得られないのであり、手を動かさず、放送したり宣伝したりしただけの製作委員会のメンバーだけが利益を独占するという、異常な構造になっている。実は今回一番指摘したかったのは、この部分です。注意しなくてはならないのは、製作委員会の各社は、製作した作品から利益を得ますが、赤字なら損失を抱えるという点です。たとえば10億円で劇場用アニメーションを製作したとして、映像3権やらグッズやらでがんばったものの、売上が1億円しかなかったとします。この場合、出資者は出資額を回収できません。つまり赤字です。一方、単に制作を受注しただけの制作会社は、もともと出資していないので、出来上がったアニメーションの各種売上で黒字が増えることはありませんが、どんなに大コケしてもその大コケによる赤字を直接かぶることはありません(注)。つまり、ここで言いたいのは、赤字のリスクを負って出資する製作委員会各社が、利益が上がったときに利益を得ること自体は、必ずしも不当なこととはいえないということです。加えて、「放送したり宣伝したりするだけ」とありますが、放送したり宣伝したりするというのは、当然そこには労力も金もかかってくるというのを忘れてはなりません。もちろん、この文章が、「利益を独占することが問題だ」という点については、そういう意見もありだろうとは思います。間違っているとは思いません。ただ、なんとなく製作委員会が極悪みたいな印象を与える文章だったので、一応それなりの言い分はあるんだよと指摘するのが公平かなと思いました。
注:とはいえ、もちろん、制作会社が受け取るお金だけでは制作会社がとってもまずしい状況におかれがちな現状というのは大問題です。ただ、中小の制作会社にしてみれば、受託業務についてのお金が適正でさえあれば、リスキーな出資には手を出したくないというのはあります。その意味で、何個か前のエントリでちょっと触れたミコット・エンド・バサラの分配のやり方は、制作会社にはとっても嬉しいわけです。彼らの方式は多分にボランティア的なシステムだなとは思いますが。もっとも、制作会社が痩せていくと業界全体が痩せていくのは間違いないので、その意味では制作会社に対してボランティア的だろうと一向に構わないわけですが。