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IPSヘッドライン
2005/12/21

│米国│政治│
▼上院・下院ともに米政府による拷問を非難 (12/15)
 米下院は、米政府の運営する収容所の収容者に対する「残虐、非人道的、あるいは屈辱的な処遇あるいは刑罰」を禁止するというジョン・マケイン議員(共・アリゾナ)の提案を308-122で可決した(賛成者の内訳は、民主200・共和107・独立派1。反対は、共和121・民主1)。これは、イラク・アフガン戦争の歳出法案への修正として同様の条項を90-9で可決した上院に引き続くものである。

 この条項には法的拘束力はないが、ブッシュ大統領は、もしこの修正が通ったら、予算案自体に対して拒否権を行使すると脅しをかけていた。また、チェイニー副大統領は、中央情報局(CIA)を同条項の適用外にしようとも画策したが、これも失敗した。

 下院はまた、国防総省に対して、容疑者の取調べに関する「陸軍戦場マニュアル」に従うよう求める決議も採択した。しかし、伝えられるところによると、陸軍はすでにこのマニュアルを改訂し、10ページほどの未公開部分を付け加えたという。その新しい部分では、囚人に無理な体勢を取らせたり警察犬をけしかけたりといった、これまで明確には禁止されていなかった事項があらためて禁止されているという。

 しかし一部の人々は「国防総省が、取調べに関わる軍人に対して取調べのルールを意図的に知らせていない」と非難している。また、民間の請負業者が捕虜虐待を行なっているケースもある。

 ジョン・マーサ下院議員(共・ペンシルバニア)は、「極端な取調べの手法をとることにより誤った情報がもたらされ、その結果、イラク戦争以前には、イラクに大量破壊兵器があると信じ込まされることになった」と批判した。マーサ議員は、基本的に軍の擁護者として知られているが、2週間前に、米軍をクウェートまで撤退させることを訴えて論争を引き起こしていた。

 米国より、海外の収容所における拷問をめぐる論議を紹介する。<原文へ>

|人権|
▼ドイツ上空を秘密飛行するCIA関連航空機(12/07)
 ドイツ国籍のカーレッド・エル・マスリ(Khaled el-Masri)氏が米中央情報局(CIA)により飛行機でアフガニスタンに連行・拘束された事件は、ドイツ政府に大きな課題を残しつつある。

 最新の報告書では、社会民主党と緑の党の前連立政権は、米軍がドイツの領空を侵犯した報告を受けていたとされる。また、ドイツ・米国の両公式文書では、ドイツ政府が米国によるマスリ氏の違法拘留についての情報を受けていたことも明らかになっている。

 特別身柄引き渡し(extraordinary rendition)(同時多発テロ以降、容疑者の尋問のため多用している手法:IPSJ)により、マケドニアを旅行中のマスリ氏はCIAに拘束され、アフガニスタンの秘密施設へ移送・拘留を余儀なくされた。その後、無実が明らかになり釈放。マスリ氏は、収容施設内での非人道的な扱いを受けたとしてCIAを人権侵害で訴えている。一方、全米市民自由連合(American Civil Liberties Union:ACLU)も、同氏への拘束・拷問に対して、ジョージ・テネット前CIA長官およびCIAを提訴している。

 ドイツ政府は(対イラク戦争に反対を表明したこともあり)最近では米国との関係修復に乗り出している。しかし、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は現在、(本件を巡って)ドイツの主権を脅かしかねない深刻な課題に直面している。ドイツ当局によれば、CIA関連航空機が少なくとも437回領空侵犯したと報告されている。(ただし、すべて米国機によるテロ容疑者の移送に関係するものかどうかは不明)

 リベラル派の政党であるドイツ自由民主党(FDP)ディルク・ニーベル氏は、この米国機による移送疑惑を『ドイツに対する侮辱行為』と見なしている。また、米国の飛行に関してドイツの外務省は認識していたとし、当時の元関係者に情報を公開するよう要求している。CIAは同時多発テロ以降、東欧などに秘密収容所を設置し、テロ容疑者を航空機で移送するという行為をドイツ以外の国でも行ったとされている。(関連ヘッドライン:イタリアの事例

 メルケル首相はゴンドリーザ・ライス米国務長官との会談後、民主主義的な原則が維持されなければならないことを強調した。一方のライス国務長官は、マスリ氏の事件に関連して、米国は過ちについては直ちに修正すると述べた。ドイツ人男性の誤認拘束で表面化したCIAによるテロ容疑者移送問題への疑惑について報告する。<原文へ>

|政治|
▼アラブ諸国、ブッシュ政権の進める民主化にソッポ(12/07)
 アラブ・アメリカ研究所はアラブ6カ国における最新の世論調査の結果を発表した。アメリカに対する敵意は若干緩和したものの、批判的意見は増えたようだ。

 対米感情を形成する上でもっとも大きな要因は、イラク戦争と、アメリカによるアラブ人、イスラム教徒の扱いである。アラブ・イスラエル紛争解決におけるアメリカの役割は第3位に挙げられているが、はるか後方に置かれた。ブッシュ政権の進める民主化はそっぽを向かれただけでなく、民主化メッセージを集中させたエジプト、サウジアラビアでは、かえって8割の人々の嫌悪感を煽ってしまった。

 世論調査は10月後半にレバノン、エジプト、ヨルダン、モロッコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)においてゾグビー・インターナショナル(Zogby International)世論調査会社が都市部の3,900世帯を対象に面接調査の形で実施。対外姿勢だけでなく、生活、内政についても意見を聞いた。(関連ヘッドライン

 2002年の初回調査と比較して、アラブ人の最大関心事は家族、仕事、宗教など身近なことに移ったようだ。国が直面する問題として重視されたのは雇用、保健、汚職、教育システムの順。ブッシュ政権が展開するテロとの闘い、民主化推進、人権尊重は軽視されている。イスラエル・パレスチナ紛争の解決も2004年の第2位から第7位に急落した。

 アラブ地域における和平の見込みについては悲観する者が増える中、実生活の向上について満足感を示すものが増えた。女性の職場進出は、家庭の収入源としてであれば認める意見が多い。ただしこの問題については、男女間で賛否の割合が異なる。

 2004年にはイラク戦争に起因する反米感情が席巻していた。2005年には若干緩和されたものの、過半数が反米感情を抱く現状は続いている。在留シリア軍撤退でアメリカが大きな役割を果たしたレバノンにおいても、8割近くが反米感情を抱いたままである。中国、インドに対する感情は対米感情より遥かに良好で、モロッコとアラブ首長国連邦(UAE)を除くとロシアさえ、アメリカより好意的に扱われている。

 アラブ地域におけるアメリカの精力的活動が報われない状況を示す世論調査の結果について報告する。<原文へ>

|貿易|
▼WTO閣僚会議:貧困者の生活と開発問題を考慮するようNGOがEUに圧力(12/5)
 WTO香港閣僚会議は「どんなによくとも、貧困に暮らす数十億の人々に何の利益ももたらさず、最悪の場合は、数百万の人々の生活を破壊するだろう」と、EU代表団に参加する4市民団体が、12月5日、共同声明を発表した。

 ベルギーに本拠を置く4団体は、開発問題に取り組む欧米15のカトリック系団体の連合組織「開発と連帯のための国際協力(CIDSE:International Cooperation for Development andSolidarity)」、環境団体「グリーンピース」、社会サービスの提供・人道援助・生涯学習に携わる「ソリダール(Solidar)」、および「女性と開発ヨーロッパ(WIDE:Women inDevelopment Europe)」である。

 WTO香港閣僚会議(12月13〜18日)は、加盟国148カ国の貿易担当大臣が集まり、農業から製品・サービスに至る貿易の自由化を目指し、暗礁に乗りあげていた4年前のドーハラウンドの妥結を試みる。

 市民団体は共同声明の中で「EUは貧困諸国が公正な取引を確保できるよう必要な譲歩を行なう準備ができていない」と警告し、「欧米その他富裕国は、閣僚会議の結果が人々の雇用や生活にどのような影響を及ぼすか考えてもいない」と指摘している。

 「貧しい人々にとって重要なことは、貿易の利益の攻防でもなく、貿易の自由化と市場保護の対立でもなく、食料の安定供給と、安心して働くことのできる人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)と、安定した生活であり」(CIDSE政策担当官Guillaume Legaut氏)、「持続可能な開発こそ、世界貿易システムの最重要目的である。WTOの中心メンバーとしてEUは、すべての人にとって持続可能な結果を確保できるよう、率先して取り組むべきである」(グリーンピースのJuergenKnirsch氏)とEUに訴えるNGOの主張について報告する。<原文へ>

翻訳=山口 響、角田美波・松本宏美・坪沼悦子(Diplomatt)/IPSJ浅霧勝浩

(IPSJapan)

     ◇

IPS Japanニュースの記事一覧

今日の1つ目はワシントンから、ブッシュ政権によるテロ容疑者への拷問疑惑に対して米議会が厳しい立場を明確にしたことを報告するIPS記事を紹介します。(IPS Japan浅霧勝浩)







2つ目はドイツから、同国男性の誤認拘束で表面化したCIAによるテロ容疑者移送問題への疑惑について報告したIPS記事。
3つ目は、アラブ地域6カ国において実施された最新の世論調査の結果を報告したIPS記事。(IPS Japan浅霧勝浩)
IPSの中東特集コーナーはこちら







4つ目はWTO香港閣僚会議から、世界の貧困層の声を代弁してEU代表団に訴えたNGOの主張を紹介したIPS記事。(IPS Japan浅霧勝浩)
IPSのWTO特集コーナーはこちら
資料:Envolverde






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