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保育園の民営化に待った!

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保育園の民営化に待った!
休日の保育園。質の高い保育サービスが望まれるが・・・。 (撮影:村田 秀人)
【PJ 2005年11月21日】− 江東区では近年マンション増加により保育需要が急増している。不足を補うため都内でもいち早く保育園の民営化などを進めている。江東区の広報によると、現在区立直営保育園の運営には年間約70億円を必要としている。このうち保護者の
負担は約9%であり、不足分には税金をあてている。例えば、0歳児保育で同程度の保育サービスを提供する場合、園児一人当たりの運営費は私立保育園の月37万円に対し、区立では月47万円と大きく差がつく。区としては、人件費の節約のために今後保育士を増やさず、アウトソーシングを積極的に活用して、最終的には区立保育園の民営化を進めたいとの考えのようだ。

 だが、区のこうした方針に疑問がある。保育現場の実情をじゅうぶんに把握し切れていないと思われるからだ。経費節約により、保育サービスの質の低下が懸念される。区内のある私立保育園では質の高い保育サービスが評判を呼び、入園待ちの児童が常に大勢いる。そこではキャンプや遠足、クリスマス会など園児が喜ぶ年中行事が多く、街中の保育園には珍しく普段からよく公園へ散歩に出掛ける。また、保護者が仕事で遅くなり保育時間に遅れて迎えに行っても、厳しく注意されることはない。共稼ぎで忙しく子供にかまう時間の少ない保護者の多くに感謝されている。

 反面、こうした手厚いサービスを維持するために、保育士に重い負担がのしかかる。厳しい労働環境の中で、多くの保育士は2−3年で辞めていってしまうそうだ。区立保育園では、結婚・出産後も仕事を続ける保育士が多くいるが、この私立保育園では殆ど前例がない。保護者に望まれる質の高い保育サービスの提供と、保育士自身の家事・育児とが両立できないと言う皮肉な現実がある。保育士の高い職業意識が、質の高いサービスが維持している、といった保育の実情を見過ごして良いのだろうか。

 人口減少による少子化と女性の積極的な社会参画とが大きな社会問題となっている今の日本で、保育園の民営化を国や地方公共団体が押し進める小さな政府、つまり「民間にできることは民間へ」の潮流の中だけで理解するのは、短絡に思えてならない。目先の経費削減目的からの需要と供給による市場ルールや保護者、保育士のモラルに頼った保育園民営化の方針は、中長期的に保育士の不足や保育レベルの低下を招く結果を招きかねない。

 保育には過大な労力を要しながらも、子供の身体や人格の成長を見守り、育んでいくと言う大事な役割がある。社会において、経済的な側面だけでカバーできない部分を補うのが公的機関の重要な役割とすれば、区は、区立保育園の民営化でなく、私立保育園の国営化を目指すべきではなかろうか。保育現場に「NO!」を突きつけ去って行った保育士達が、もう二度と戻らないかと思うと、このままで良いのかと懸念する。

 これから先、質の高い保育サービスを維持するためには、保育士の労働条件の改善は必要不可欠。子育てを社会全体で支えることが少子化問題の解決にもつながる。そのためには、応分の税金投入はやむを得ないと考える。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

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