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2007年11月2日

◎コメ過剰作付け 「罰則」導入しルールの徹底を

 二〇〇七年産米が大量に余り、米価が暴落したのは、目標数量以上の過剰作付けをした 府県が続出したためである。政府・与党は農家保護を理由に過剰米四十四万トンを買い上げる決定をしたが、過剰作付けのツケが消費者に回されるのは、納得がいかない。

 石川県や富山県の場合、農家が愚直に割り当て数量を守り、生産調整に協力したのに、 他府県のルール違反のあおりを受け、「正直者はばかを見る」結果になった。農政は「ノー政」とはよく言ったものである。

 農水省は〇八年産米から、都道府県ごとのチェック体制を強化する方針という。それぞ れ作付け目標面積を示して過剰米を防ぐ狙いだが、こうした事実上のルールを守らず、目標を達成できない都道府県には、交付金や補助金を減らすなどの「罰則」も必要ではないか。

 〇八年産米に関しては、過剰作付けをした府県の目標面積をより多く削減するペナルテ ィを付与してもらいたい。米価を暴落させ、税の投入を余儀なくさせた責任を厳しく問わねばならない。

 今年のコメの平均市場価格は、六十キロあたり一万四千五百円となり、前年比で10% 近く値下がりした。コメの平均的な生産コストは一万五千円といわれるから、農家にとっては採算割れの異常事態である。作況指数は石川県で全国平均並みの九九、富山県で九七と、平年をわずかに下回ったのに価格が下がった最大の理由は、必要以上にコメをつくり過ぎて需要と供給のバランスが崩れたためだ。

 作付面積を減らす生産調整を無視して、過剰作付けを強行する農家が増え、全国三十府 県で生産調整の目標数値を達成できなかった。特に千葉県(123・2%)、福島県(119・9%)の成績が悪い。99・1%の石川県や97・1%の富山県の農家にすれば、憤まんやる方ない思いだろう。

 政府が自民党の要求を丸飲みするかたちで、余剰米の購入を決めたことで、価格は反転 するだろうが、今回の買い入れで備蓄米は、適正水準とされる百万トンに達した。来年以降は、価格維持のための買い上げは不可能になる。血のにじむ思いで生産調整に協力した地域が損をするようなことが二度とあってほしくない。

◎腹が立つ年金管理 「タイタニック号」にはできぬ

 年金記録問題検証委員会の最終報告は、強制力を持たない調査という限界もあり、すで にいろいろ指摘されたことを総括したようなものだったが、それでも記録管理のずさんさに数々の不祥事が思い出されて腹立たしい。

 だれのものか分からない、いわゆる「宙に浮いた」五千万件の年金記録から七千八百四 十件を無作為抽出して調査した結果、コンピューターへの入力ミスや、結婚して姓を変更したなどにより、持ち主の特定が難航しそうな記録が四割近くあるのが分かったという。だれの記録か確認するのが困難でも、いくら腹立たしくても、国民の大切な財産である年金を「タイタニック号」のように沈没させるわけにはいかない。

 検証委は、その大切な年金に関する記録を正確に作成し、保管・管理するという使命感 や責任感が、厚生労働省および社会保険庁に決定的に欠如していたとした上で、社保庁の歴代長官をはじめとする幹部職員の責任は最も重いと断じ、さらに管理システムに一貫性がないという重大な指摘をしている。

 厚生年金が始まったのが第二次大戦中からである。それから数えて、年金制度は六十五 年になった。オンライン化されたのは一九八〇年代だが、発足間もないころから保存・管理に問題が起き、その後に入力ミスなどが重なって深刻な状態になり、それを正さなかったため、身元の分からない記録が増えたようだ。

 記録を正す機会が何度かあったのに、ミスを確認して正確なものに直すという積極的な 取り組みをしなかばかりか、システムの機能がこれでよいのかとの見直しもされなかったというのだ。

 システムを決めた責任者はだれなのか。特定業者との随意契約で今日に至ったというの だが、業者も一貫性のなさに気づかずにきたのか。記録のずさんさ、管理のずさんさをなぜ改めることができなかったのか。そう考えていくと、年金を受け取る本人が手続きをするという「申請主義」に行き当たる。すなわち、本人が請求の手続きに来たときに確認すればよいということでだらだらきたのである。この申請主義についても早急に見直してもらいたい。


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