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社説

海自、インド洋撤収へ 武力でテロはなくせない(10月31日)

 対テロ戦争は本当に有効なのか。武力によってテロをなくすことはできるのか。

 そんな根源的な問いがいま、目の前に突きつけられている。

 灼熱(しゃくねつ)のインド洋で、海上自衛隊の補給艦が最後の給油活動を終え、あす十一月一日限りで撤収する。テロ対策特別措置法が期限切れとなるためだ。

 「国際貢献」の名のもとに続けてきた給油は、そもそも日本の正しい選択だったのだろうか。この機会にあらためて考えてみる必要がある。

 テロリスト掃討を掲げながらアフガニスタンの人々の命と暮らしを踏みにじってきた現実にも、目を向けなければならない。そこから日本の果たすべき役割が見えてくるはずだ。

*空爆の惨禍が憎悪を生む

 海自の給油は「9・11テロ」のあと、米国主導で始められた対テロ戦争の後方支援だった。この六年間で、計十一カ国の艦船に約四十九万キロリットルを無償提供してきた。

 政府は国際社会から高い評価を受け、感謝されていると強調する。しかし、その八割は米国向けのものだった。事実上の米国支援といっていい。言葉を換えれば「日米同盟のあかし」ということだ。

 日本から補給を受けた艦船は、アフガンの空爆作戦に参加してきた。爆撃の巻き添えになったり誤爆にあったりして幾多の命が奪われ、国土と生活が破壊されてきたことも隠しようのない事実だ。

 確かにアフガン攻撃は、テロリストの拠点をたたいた。だが、理不尽に家族や友人を奪われた人々の憎悪は新たなテロを生み出す。

 旧政権タリバンが人々の根強い支持を得て復活したことを見れば、対テロ戦争の限界は明らかだろう。

 自衛隊という実力部隊の参加こそ国際社会への貢献策だと考える政府は六年前、反対世論を押し切ってインド洋への海自派遣を決めた。しかし、実態は戦争の後押しだった。

 しかも給油をめぐっては、イラク戦争への転用疑惑や給油量ミスの隠ぺい疑惑が浮上している。文民統制が機能しない自衛隊活動が許されぬことはいうまでもない。

 政府は最近、シーレーン(海上交通路)防衛という考えも強調し始めた。中東に石油を依存する日本にとって、海上阻止活動に貢献することは国益にかなうとの主張だ。

 だが、広大なインド洋でその実効性はどれほど期待できるのか。国益をいいだせば世界中どこにでも自衛隊を派遣できるということにもなる。

*求められるのは民生支援

 アフガンの人々を苦しめているのは戦争だけではない。すさまじい干ばつと食糧不足も、たくさんの命を危険にさらしている。

 そうした人々を救うために現地で汗を流す日本人は少なくない。

 武器の代わりにスコップを握り、井戸を掘る。貧しい患者のために病院をつくり、治療に当たる。たとえば非政府組織(NGO)のペシャワール会は、かんがい事業ですでに千数百ヘクタールの土地を潤した実績がある。

 住民たちの声をくみ取り、信頼関係を築きながら地道に民生支援を続ける。現地で評価され、感謝されているのは、実はそんな活動だ。

 力ずくでテロリストをやっつけるという米国などの論理と、何より平和な生活を求めるアフガンの人々の願い。双方の間には埋めがたい溝がある。

 「国際社会」という言葉に、当のアフガンは含まれているのか。そこで一人一人の人間が生きている現実にどれほど想像力が及んでいるのか。

 そう問われたら、日本はどう答えることができるだろう。

 カルザイ大統領は先日、米テレビのインタビューに答え、多くの市民を巻き添えにしている空爆の停止をはっきりと求めた。それこそがアフガンの切実な声にほかならない。

*日本への信頼あってこそ

 国会では給油継続をめぐる論戦が本格化している。日本の国際貢献や自衛隊の海外活動のあり方について議論を深めるのは結構なことだ。

 ただし、その前提に憲法九条があることは忘れないでほしい。日本にはやってはいけないことがあるのだ。

 民主党の小沢一郎代表が提唱する国際治安支援部隊(ISAF)への参加も、九条を踏み越える発想だ。

 日本のNGOがアフガンで武器も持たずに活動できるのは、日本は戦争をしない国だという信頼があるからだ。

 日本がアフガン軍閥の武装解除にいったんは成功したのも、日本なら安心して武器を放棄できると協力してくれたためだ。

 では、日本がこれからできること、なすべきことは何か。

 二○○二年に東京で開かれたアフガン復興支援会議は、五年間で四十五億ドルの資金拠出を決めた。こうした国際的経済支援の枠組みづくりなどは日本のもっとも得意な分野ではないか。

 あるいはカルザイ政権と穏健なタリバン勢力との和解をバックアップし、内政の安定を図ることも必要だ。

 給油はできなくなるが、今後は民生分野で積極的に貢献したい。そういう日本の立場を丁寧に説明すれば、必ず国際社会の理解は得られるだろう。

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