社保庁の歴代長官、責任最も重い 5千万件解明ならず2007年10月31日22時13分 社会保険庁のずさんな年金記録管理の原因を究明する総務省の「年金記録問題検証委員会」(座長・松尾邦弘前検事総長)は31日、最終報告書を発表した。「記録を正確に保管・管理するという使命感、責任感が厚生労働省、社保庁に決定的に欠如していた」と批判し、歴代社保庁長官を始めとする同庁幹部の責任を「最も重い」とした。また、「宙に浮いた年金記録」約5千万件からの抽出調査で、少なくとも1割で受給漏れが起きている可能性が分かったが、被害の全体像の解明には至らなかった。 松尾氏は31日夕、増田総務相に最終報告書を提出。「特定の時期に特定の個人に責任を求める事柄ではなく、それぞれの職にある者が職責を果たしてこなかった積み重ねが深刻な事態を招いた」との座長談話を出した。 報告書では、宙に浮いた年金記録が発生した原因として、紙台帳から磁気テープ、コンピューターのオンラインへと記録管理方式が変更されるたびに入力ミスなどが蓄積されたと指摘。本人からの受給申請をもとに年金額を決めるときに記録を直せばいいとする社保庁の「裁定時主義」(申請主義)という安易な運営方法の結果、不正確な記録が「放置」されたとした。 記録が統合されていない原因解明のため行った7840件の抽出調査では、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)との照合で33.6%の生存を確認。そのうち60歳以上の記録が3割を占めることがわかった。これを抽出調査の対象全体でみると1割程度になる。 社保庁はこれまで「宙に浮いた記録の持ち主のうち60歳以上の人の分は、大半がすでに死亡しているか、加入期間が短くて受給資格がないものだ」と説明してきたが、実際には相当数の受給漏れが発生している可能性を裏付けた。 ただ、結婚による姓の変更や入力ミスなどで本人を特定できなかった記録も38.5%あったため、受給漏れの人数や総額は不明だ。 また、報告書では、入力済みのコンピューター記録も正確さに欠け、名前が欠落したものが9.6%あるなどとしており、政府が来年3月までに実施するとしている5000万件の照合作業に支障が生じる可能性がある。 本人が納めたはずの保険料の記録が残っていない「消えた年金記録」については、「入力ミスのほか、職員らによる横領が原因である可能性」を指摘。過去の保険料をさかのぼって納めることができる「特例納付」制度の悪用などの例を挙げ、公表済みのケース以外にも「横領事案が発覚せず、伏在している可能性は否定できない」とした。 一方、こうした不祥事を招いた責任については、歴代社保庁幹部への指摘のほか、事務次官ら厚労省幹部に対しても「重大な責任がある」とした。歴代厚相、厚労相についても「組織の統括者としての責任は免れない」とするなど、立場ごとに表現を変えて言及した。ただ、それぞれについて、個人の具体名には触れなかった。
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