2012年春--。ICチップ内蔵のカードを手に、自宅でパソコンに向かう私。読み取り機にカードを通すと、画面には自分の年金記録がズラリ表れ、「記録漏れはないな」とひと安心?
国の社会保障カード構想が動き始めた。一枚のカードで年金、医療、介護などの個人情報を確認できるという。そんなことが可能になるのも、全国民に生涯不変の社会保障番号を割り振り、国が個人の記録に共通の番号を付けて一元管理するようになるからだ。
社保番号は、住民基本台帳ネットワークの住民票コードを使う方向。個人情報保護のため、コードは名寄せ目的での使用や、民間の利用が禁じられている。それが、社保番号なら官民にまたがる記録の名寄せに使うことが前提となり、趣旨は大きく変容する。
個人情報保護について、政府の検討会は社保番号導入を前提とした議論に終始している。共通の番号から芋づる式に情報が流出し、ある日インターネットを見ていたら、自分の収入や診療歴までびっしり、なんて世の中はまっぴらだ。【吉田啓志】
毎日新聞 2007年11月1日 東京夕刊