母子保健の向上に貢献した個人を表彰する第29回母子保健奨励賞(母子保健功労顕彰会主催、日本母子衛生助成会・母子衛生研究会・家庭保健生活指導センター共催、厚生労働省・全国衛生部長会・毎日新聞社・NHK後援、クリニコ・日本ケミカルリサーチ協賛)の受賞者15人が30日、発表された。毎日新聞社賞には愛知県小牧市福祉部保健センター所長、江崎みゆきさん(52)=3面に「ひと」=と、島根県斐川町役場健康福祉課健康係主任保健師、錦織(にしこおり)紀子さん(48)、山形県酒田市立八幡病院助産師、後藤敬子さん(50)の3人が選ばれた。
他の受賞者は次の通り。(敬称略)
《NHK賞》石川県内灘町、本弘美(48)▽山梨県甲州市、池田久剛(51)▽東広島市、桧山和子(50)《奨励賞》岩手県滝沢村、千葉澄子(52)▽福島市、野口まゆみ(52)▽栃木県真岡市、渡辺利子(53)▽群馬県伊勢崎市、須田文枝(52)▽川崎市中原区、山田美也子(48)▽新潟県長岡市、酒井由美子(51)▽兵庫県西宮市、瀬戸山敏子(54)▽宮崎県椎葉村、椎葉邦子(44)▽鹿児島市、古川秀子(52)
◇食生活の改善訴え続け--錦織紀子さん
85年から保健師として母子保健活動に従事してきた。斐川町内の3歳児検診にかかわり、虫歯を持つ子が75%もいることに驚いた。検診時に生活・食事調査をしたところ、お茶とお菓子を頻繁にとる地域独特の文化が浮かび上がった。子どもたちは1日に3回以上もおやつを食べ、欠食率も高かった。
おやつに含まれる糖分やカロリーが一目でわかる教材を独自に作り、保育所や地域に持ち込んでは徹底的に食生活の改善を訴えて歩いた。理解は広まり、虫歯有病率は半減、欠食率も激減した。
活動で築いた保育所や地域とのネットワークを基に、子育てサークル設立や子育て相談にも取り組んだ。95年には特別な支援を必要とする児童と保護者のため、保育所に隣接した通所型の療育支援所を開設した。県内初の取り組みは、このネットワークがあったからこそ早期に実を結んだ。
受賞にあたり、「総合的に動かないと、子どもや母親の支援はできない。これからも人と人とのネットワークを基に、時代に応じた取り組みをしていきたい」と語った。【細川貴代】
◇若いお母さんの相談役--後藤敬子さん
「ここまで来られたのは周りに支えてもらったおかげ。皆でいただいた賞です」。かかわってきた人たちへの感謝の念を忘れない。
母親も助産師だった。赤ちゃんを取り上げると「生まれたよ。とても元気な子だったよ」と出産の様子を話してくれた。頼もしいその姿を見て小学生の時、「看護師になる」と作文に書いた。
千葉大医学部付属助産婦学校(02年閉校)で学び、故郷の山形県旧八幡町(現酒田市)立八幡病院に勤務。その後、異動した同町保健福祉課時代に母子保健管理システムの構築に取り組んだ。医療機関と連携し、妊婦や若いお母さんを家庭訪問し、悩みを聞いた。明るいけれど子育てに自信が持てない女性が多かった。
根気強く話を聞くのは大変な作業だったが、「産もうとする力、生まれようとする力を受け止め、手を差し伸べることができる」。そんな喜びを感じてきたという。
04年に思春期保健相談士の資格を取った。今は学校などで講演するほか、電話や携帯メールで中高校生の相談にも乗っている。【粕谷昭二】
毎日新聞 2007年10月31日 東京朝刊