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【ゆうゆうLife】医療 なんくるないさ 沖縄と緩和ケア(中) (1/3ページ)
このニュースのトピックス:暮らし
独特の死生観があり、患者の緩和ケアに対する抵抗感がない沖縄県。痛みのケアも積極的に行われており、医療用モルヒネの使用量が高いのも特徴です。患者の要望をかなえるため、緩和ケアのスタッフらは「意向を事前にくみ取り、受け皿を整備することが大切」と話しています。(北村理)
「病室で女性患者さんが泣いているんだけど…」
3年前の6月。沖縄県の友愛会訪問看護ステーションで当時、所長をしていた小橋川初美さんは、系列の南部病院の病棟師長から相談を持ちかけられた。
女性は、がんが胃から腸に転移し、手術はできない状態だった。聞けば、5歳から9歳の子供が3人いるという。
小橋川さんが「家に帰りたいんでしょ。かわいい子供の顔を見たいんでしょ」と聞くと、女性はウンウンとうなずいたという。
女性は腸や腎臓の機能が低下し、食事も取れず、点滴に頼る日々。それでも、小橋川さんは「今ならモルヒネで痛みを取って、自宅に帰すことができるのではないか」と考えた。
主治医に相談すると、主治医は「まだ治療法はあるのに」と抵抗したが、小橋川さんは「意識がなくなってから家に帰しても意味がありません」と、説き伏せたという。
女性は帰宅し、2カ月後には亡くなったが、昏睡(こんすい)状態になる3日前には、家族と海水浴にも出かけた。家で過ごす間、一刻一刻をかみしめるように、終始穏やかな顔で子供たちと過ごしたという。