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ワールドシリーズ特集2007

ワールドシリーズ初開催 デンバーよもやま話

(2007/10/29 丹羽政善)

普段静かなデンバーの街は、大きな盛り上がりを見せている。(写真提供:AP Images)

普段静かなデンバーの街は、大きな盛り上がりを見せている。(写真提供:AP Images)

【デンバー28日=丹羽政善】北米大陸の西部、ロッキー山脈のふもとにあるコロラド州デンバー。標高1600メートルに位置することから「マイル・ハイ・シティー」の愛称で知られるこの都市にメジャーリーグの球団が誕生してから、ちょうど今年で15年になる。初めてワールドシリーズを開催しているコロラド・ロッキーズのホームタウンの様子を紹介する。

▼コールドナイト
 デンバーで行われた第3戦は、開始時間の気温が7度。1982年以降では、史上5番目に寒いワールドシリーズとなった。

 ただ、4月のセーフコ・フィールドの方が、寒い。シアトルの場合、ゲーム開始時間の気温が5度を下回ることもある。

 昨日の場合、風がほとんどなかったことも幸いした。試合中盤まで、右翼席の記者席で見ていたが、我慢できないほどではなかった。これなら、昨年のデトロイトでのワールドシリーズの方が確実に寒かった。昨年は、試合前にみぞれが降り、試合中も小雨。他の記者も、多くが「今年は、昨年よりまし」と話していた。

 一転して28日は、朝から穏やか。日中はTシャツでも街を歩けるぐらいで、試合開始時の気温も15度近くと暖かくなることが予想されている。

 先週、21日に雪が降ったデンバーだが、明日29日は今日以上に暖かい日になるようだ。

 試合があれば、だが。

▼スカルパー!
 スカルパーとは、いわゆるダフ屋のこと。デンバーでは、額面以上での販売が禁止されていて、警察に見つかった場合は、999ドル(約11万円)の罰金と1年の禁固刑となる。

 しかし、もちろん球場のまわりには明らかにダフ屋がうろうろ。あれだけいるということは、警察がおとりを使ってまで、取り締まりをしていないということか。

 ちなみに、あるファンが2枚のチケットを買おうとしたところ、1500ドル(約17万円)と言われたそうだ。

▼2週間、勝ちなしのロッキーズ
 ロッキーズは、9月16日から30日までの15日間で13勝を挙げた。1カ月後、10月16日からの12日間で、ロッキーズは一度も勝っていない。もっとも、3試合しか負けてもいないけれど。

 こうなって来ると、やはり8日間の休みが大きい。過去には、それを克服したチームもあるけれど、やはり4月からほぼ毎日のように試合をして来た選手が、それだけゲームを離れるということはマイナスだ。

 4月、マリナーズが4試合を雪のために流したことがあった。その後、イチローですら3試合で7三振を喫するなど、リズムを崩している。

 レギュラーシーズンでさえ、影響はある。ましてや、紅白戦から一気にワールドシリーズ。ゲーム感に加え、気持ちの問題でも1週間以上のオフというのは、アジャストが難しいものであるに違いない。

 ただ、つらいのはロッキーズのスカウト部隊か。準備する時間は、十分に合ったはずだが、今のところそれが伺えるようなシーンがない。

▼デンバーのファン
 27日の試合後、デンバーの街は多くの人で溢れていた。ちょうど、球場のまわりに多くのバーがあって、ロッキーズファンがそのまま流れたのかと思ったが、よく見ると、みんな仮装している。

 そう、31日はハロウィーン。野球ファンとは全く関係のない人たちが、球場周辺のバーに集まっていたのだ。

 ただ、にわかファンは球場にも多かった。

 昨日の試合前、球場のコンコースには、どこもすごい数の人でごった返していたが、苛立ったファンが口々に言っていた。

「今まで、何度もここに来ているが、こんなに歩けないほどの人を見たことはない」

 チケットを手に入れられず、泣く泣くダフ屋から買おうとしているファンも、こう話していたそう。

「3週間前まで、誰もロッキーズなんて気にしていなかったのに…」

▼スポーツタウン・デンバー
 デンバーには、野球のほかにフットボール、バスケットボール、アイスホッケーと4大スポーツがすべて存在する。

 全米で、4大スポーツのプロチームを持つ都市は「12」あるが、その内、デンバーは人口でいうと、下から4番目に小さな都市ということになる。

 2006年の調査だと、その人口は約57万人。やはりこのサイズで、4つのプロスポーツが成り立っているということは、すなわちデンバーは全米でも有数のスポーツタウンであると言えるだろう。

 その中でも、もちろん一番の人気は、フットボール。実は翌29日の夜、デンバー・ブロンコスとグリーンベイ・パッカーズのマンデーナイトゲームが行われるが、ファンの興味は、ロッキーズよりもむしろ、そちらにあるかもしれない。

 そういえば、ブロンコスも1998年に初めてスーパーボウルを制すまで、スーパーボウルでは散々だった。

 78年は、10−27でダラス・カウボーイズに敗退。87年は、20−39でニューヨーク・ジャイアンツに敗れ、その翌年、88年も10−42でワシントン・レッドスキンズに大敗している。さらに、90年のスーパーボウルでは、サンフランシスコ・49ERSに10−55で負けている。

▼メディアダイニング
 試合前、報道陣には食事が配られるが、ワールドシリーズ、オールスターなどでは、サンドウィッチとクッキー、果物が箱の中に張っているだけで、実に味けない。

 しかし、ボストンでは、ロブスターが振る舞われたそう。2004年も、ロブスターが出たそうで、デンバーとの差に、多くは失望感を隠せない。

 ロブスターなどを出すか出さないかは、チームの判断。ボストンは、シーズン中もメディアに対して日本食を用意するなど、われわれに対して親切だった。

 せっかく、初めてのワールドシリーズを開催しているのである。ロッキーズは、ここで豪華な食事を用意すれば、メディアの印象もぐっと良くなるのに。記者なんて、その程度のことで、好意的にも、好戦的にもなるのだから。

▼Yoko’s
 デンバーのダウンタウンにある、日本食レストラン。お店に入ると、松井稼頭央の活躍を伝える地元紙の切り抜きが壁に貼ってあって、その一つ一つに松井のサインがあった。

 つまり、松井の行きつけということ。

 27日、試合前のダウンタウンを知り合いのカメラマンらとフラフラ。Yoko’sの前まで来ると、もうお店は閉まっていたが、外からのぞいていると、おばさんが出て来て、「うどんなら作ってあげるよ」。

 寒い中、「ありがたい」とお店に入り、「じゃあ、鍋焼きうどんをお願いします」と注文すれば、少し雰囲気が変わる。

「あっ、チキンうどんだけね」

 だけ、ですか?

 ただ、本当に親切。松井が、あれだけ通っていているであろう(サインの数から推測)理由も分かるような気がした。


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