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【ゆうゆうLife】医療 なんくるないさ・沖縄と緩和ケア(上) (3/3ページ)
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だが、沖縄だからこそ難しい点もある。沖縄県では、平均所得が全国レベルを大きく下回る。共働き家庭が多いため、家庭の介護力は低く、低所得で在宅ケアにたどりつかないケースも少なくない。
玉城さんも、祖母を看取った後、1人暮らし。乳がん治療で職を失い、経済的な不安もあり、当初は在宅ケアを受けたがらなかったという。
しかし、小橋川さんらは1カ月通い、玉城さんの声に耳を傾けた。「在宅ケアは、入院治療を受けるほど高くないし、痛みをケアしないと、家での生活も成り立たない。そう説得し、ようやく在宅ケアを受け入れてもらった」という。そのうえで、1人暮らしでも安心して緩和ケアが受けられるよう、訪問看護師や介護ヘルパーを組み合わせ、きめ細かく対応した。
昨年、がん対策基本法が成立した。国は緩和ケアを行う医師と病院を増やすことを目指す。
しかし、現場では、熱心な医療スタッフらが、患者の不安を埋めながら取り組んでいるのが現状。「緩和ケアの素地がある」といわれる沖縄でも、質の高い緩和ケアを受けられる地域は限られている。専門家らが啓発活動を進めるなど、模索を続けている。
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【用語解説】緩和ケア
生命を脅かす疾患に直面する患者と家族へのトータルアプローチ。痛みの管理だけでなく、社会から取り残される不安や、死への恐怖などへの心理的、精神的なケアも含む。がん患者への痛みの管理では、WHO(世界保健機関)が1986年、モルヒネなど医療用麻薬による治療基準を示した。日本では専門医の不足、医療用麻薬への抵抗感などから、立ち遅れが目立っていたが、昨年成立した「がん対策基本法」では、初期がんからの導入が必要とされた。