依存性の高い向精神薬「リタリン」乱用に絡む医師法違反事件で、事件の舞台となった精神科「京成江戸川クリニック」(東京都江戸川区)では、6人いるスタッフ全員がリタリンを含めた薬剤の違法処方などに関与していたことが分かった。うち5人は違法行為の責任を追及されることをおそれて退職したという。逮捕された院長の小倉暢夫容疑者(67)らの指示により、クリニック全体で不正が行われていた構図が浮かび上がった。
警視庁生活環境課の調べによると、クリニックには医師である小倉容疑者のほかに、看護師2人と事務員4人が勤務していた。小倉容疑者は今年8月中旬に体調を崩して入院した際、「いつも通りにお願いします」と、不在の間もリタリンなどの投薬や診療を続けるよう指示。ベテラン事務員で小倉容疑者とともに逮捕された生駒祐子容疑者(42)が、クリニックの業務を取り仕切っていたとみられる。
関係者によると、違法性を認識して不正をためらった一部のスタッフを、別のスタッフが「先生がいいと言っているので大丈夫」と説得したこともあったという。
一方、小倉容疑者は逮捕前の任意聴取の段階から事実関係を認め、動機を「患者さんがかわいそうで、求めに応じてやった」と説明していた。小倉容疑者がクリニックにいる間も診察を行わず、スタッフが無資格で医療行為を行っていた可能性も浮上しているという。
生活環境課はクリニックから押収した資料を分析し、小倉容疑者の入院以前から違法な医療行為が常態化していなかったか調べている。【精神医療取材班】
毎日新聞 2007年11月1日 2時30分 (最終更新時間 11月1日 9時21分)