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社説

療養病床削減 患者が不安抱かぬよう(11月1日)

 慢性病の高齢者らが長期入院する療養病床の削減計画の素案を道がまとめた。

 道内二万七千床の療養病床のうち三割の八千七百床を二○一一年度末までに減らし、介護施設への転換を目指す。

 「療養病床の患者の半数は治療の必要がない」と厚生労働省が昨年、医療費抑制を目的に病床の削減方針を示したのを受け、道が医療機関の意向を調査したうえで検討を進めてきた。

 国の基準を当てはめると、道内では五割近い削減が必要になる。

 だが、北海道は広大で、特に冬場の通院は大きな負担となる。

 地元の事情に配慮して削減幅を三割に抑え、一定の病床を確保しようとする道の判断はある程度評価できる。

 だとしても、「計画ありき」で機械的に削減すべきではない。患者の「受け皿」を整え、円滑な移行を確かめながら進めることが大切だ。

 療養病床には医療保険適用の「医療型」と介護保険適用の「介護型」がある。国は一一年度末までに、二十五万床ある医療型を十五万床に削減し、十二万床の介護型を全廃する方針だ。

 併せて、療養病床を再編して老人保健施設や有料老人ホーム、ケアハウスなど居住型介護施設への転換を図り、軽度の患者を移行させる考えでいる。

 医療コストの低い介護施設や在宅の療養に切り替えれば医療費が減ると国は踏む。課題は受け皿の確保だ。

 転換促進のため、国は融資制度の新設や施設基準緩和といった支援策を取りつつあるが、来春の介護報酬改定時まで詳細が決まらない措置が多い。

 採算が取れるのか不透明で、道の調べでも、対象の医療機関のうち介護施設への転換を考えているのはまだ一割だ。二の足を踏むのも分かる。

 療養病床削減に向けて、国は昨年七月、医療の必要性の低い療養病床の患者の診療報酬を引き下げた。

 その結果、療養病床は減り始めた。退院させられる患者が出ている。採算が取れずに廃業した病院もある。

 療養病床から介護施設に転換したところの実態はどうなのか。患者は安心して療養を続けているのだろうか。

 国は都道府県と連携して実情を追跡調査し、削減計画に無理があるならば見直すべきだ。

 北海道は高齢者一人当たりの医療費が都道府県で二番目に高く、在宅死亡率が9・6%と全国で最も低い。

 家庭や地域での介護力が弱く、「社会的入院」が多いことを裏づける数字でもある。居住型介護施設を含めた在宅医療の拡充は、北海道だけではなく全国共通の課題だ。

 とはいえ、国の財政事情を優先して療養病床の削減を進めるのはどうか。

 患者受け入れの見通しが立たぬまま施策が先行し、行き場を失う高齢者が出るようでは困る。

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