画像診断、フィルムレス化を評価

 厚生労働省は、胸部のX線撮影やCT・MRIなどの撮影画像を印刷せずにモニターを見て診断する「フィルムレス化」を進めるため、2008年度の診療報酬改定で「フィルムレスによる画像診断」を診療報酬で評価し、従来の「デジタル映像化処理加算」を廃止する方針を固め、10月31日の中央社会保険医療協議会・基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に提示した。

 厚労省によると、「デジタル映像化処理加算」は画像のデジタル化を目的として1988年に導入された。2006年にはデジタル化率が70%を超えるほど普及したが、フィルム費用の減少につながっていない。

 05年のデジタル加算にかかった費用は年間約600億円、フィルム代は02年から06年にかけて年間約400億円で推移している。

 一方、デジタル画像の診断を専門に担当する医師が画像診断をした場合に加算される「画像診断管理加算」は、すべての画像診断について文書で報告することが算定要件に組み込まれるなど、画像診断医の過重な負担になっているという。

 このため、厚労省はフィルム撮影をデジタル化した場合の加算は「導入時の役割を終えている」として、次期診療報酬改定で「フィルムレスによる画像管理技術」を評価することで、フィルムレス化を進める。また、画像診断医の過重な負担を軽減するため、「画像診断を専ら担当する常勤の医師」「文書による報告」といった要件を見直し、診断結果を正確に報告する体制などを評価する。

 土田会長は「医療技術の進歩に対応して診療報酬を変えていくのは重要だ。画像診断が果たしている役割を踏まえながら、進歩に伴って評価体系を見直す必要がある」と評価した。

■ 委員の反応
 
デジタル化70%の普及率について、鈴木満委員(日本医師会常任理事)は「画像診断のデジタル化は病院に偏在しているのではないか。プライマリケアの現場の事情とかい離しないよう全体の質向上に配慮した考えでお願いしたい。安易にデジタル映像化を進めることは病院志向を進行させ、診療所と病院との格差を広げる」として、慎重な対応を求めた。

 これに対して、厚労省保険局の原徳壽医療課長は「日本画像医療システム工業会から、デジタル映像化の技術を導入している診療所は13%であると聞いている」として、デジタル映像化が診療所に普及していない現状に理解を示した上で、「しかし、診療所ならば設置するモニターの数は少ないし、設備投資に膨大な費用がかかるわけではない。デジタル映像化をするなら一気にフィルムレスまで行っていただければフィルムレス加算が取れる」と強調し、理解を求めた。

 竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)は、デジタル加算が増えているのにフィルム費用が横ばいである点を指摘。対馬忠明委員(保険組合連合会専務理事)も「診療所や病院に行ってフィルムの受け渡しをするなど、フィルムにはなじみ深い。なぜフィルムレスが進まないのか、これと患者との関係をききたい。フィルムレスは患者にとってデメリットを生じないだろうか」と懸念した。

 原課長は「なぜフィルムが減らないのか、その理由は分からない。しかし、デジタル画像でもフィルムでも患者にとって大きな問題はないと思う。病院同士での情報交換はCD-Rで受け渡しを行っていると聞いているので、分厚い袋を持って行くことに比べれば、従来よりもやりやすいだろう」と答えた。


更新:2007/11/01   キャリアブレイン

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