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【ゆうゆうLife】医療 なんくるないさ・沖縄と緩和ケア(上) (2/3ページ)
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「死生観が、がん治療に影響している点は、本土と大きく違う」。沖縄県内に3カ所ある緩和ケア病棟のひとつを持つ「アドベンチストメディカルセンター」の栗山登至(とし)ホスピス医長は指摘する。
栗山医長は1年半前に来県。それまでは、神奈川県のホスピス「ピースハウス病院」で4年間、勤務した。「沖縄では、輪廻(りんね)転生という考え方が身近にある。無駄な治療は避けて、最後まで気持ちを安らかに過ごそうという患者が非常に多い」
玉城さんは乳がんが手遅れで見つかった。手術は不可能で、何度か抗がん剤治療を受けたが、効果がない。主治医と相談して、ある時期から治療をやめた。
こうした患者の姿勢は、沖縄の「なんくるないさ」(=なんとかなるさ)という言葉に表れる精神性ではないか、と栗山医長は言う。
「本土では、患者さんはがんを治すことにこだわりがち。医療に不信もあるのか、治療法がない場合に緩和ケアを進めても、難色を示される。その結果、無理な治療を受け、最後を安らかに過ごせない人も多い」
緩和ケアでは治療から移行するタイミングが難しいといわれる。しかし、栗山医長は「沖縄の人は病気の進行をありのままに受け入れようとする。独特の死生観があるからか、緩和ケアへの移行がスムーズだ」と言う。このため、患者と医師が、治療方針をめぐり対立することも、ほとんどないという。
実際、県内45カ所の訪問看護ステーションの調査では、在宅ケアを望む高齢者の6割が在宅での看取(みと)りを実現できているという。