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【ゆうゆうLife】医療 なんくるないさ・沖縄と緩和ケア(上) (1/3ページ)
このニュースのトピックス:暮らし
治療の手だてがなくなったがん患者が、病院から自宅に移り、緩和ケアを受ける動きが本格化しています。国は在宅での緩和ケアを推進しますが、態勢は十分でなく、患者も緩和ケアへの移行をためらうのが現状。しかし、沖縄では古来の死生観や米国の影響などで緩和ケアがなじむ素地があるといわれます。沖縄の現状から、緩和ケアについて考えます。(北村理)
「天国にいったら、清美さん、二重丸だね。おばあさんを10年も介護したんだから。生まれ変わったら、どうする?」
「結婚して、子供をたくさんつくりたいな」
末期の乳がんが骨に転移し、寝たきり状態だった玉城(たまき)清美さん(49)=沖縄県糸満市=は、看護師と冗談を交わすほどに回復した。
今年4月から本格的に、在宅の緩和ケアを受け始めた。2週に1回、専門医が往診し、痛み止めのモルヒネなどを処方。看護師が週3回、訪問する。
玉城さんは1人暮らし。それでも、在宅にこだわるのは、家に仏壇があるからだ。
沖縄では、仏壇を家の中心に据え、毎月のように親族や地域の人が集まり、法事を開く。祖先崇拝の風習が、在宅ケアを望むひとつの要因になっている。入院患者も法事のころには、家に戻る人が多いという。
玉城さんを支えるのは、緩和ケアに力を入れる南部病院(糸満市)。看護師長の小橋川初美さんは「生活の中での、そうした役割が、生きようという気力につながる」と指摘する。
全く食欲のなかった玉城さんだが、今はパンだけとはいえ、自力で3食を取り、点滴の回数も週3回から2回に減らした。「家にいると、先祖に生きる力を与えてもらっている気がする。病院にいると、安心な面もあるけれど、孤独だから」と、玉城さんは言う。