福山市駅家町の広島県史跡・二子塚古墳で、一昨年出土した金銅製の双竜環頭の発見について岡山大学の新納泉教授(考古学)が、大学の広報誌「いちょう並木」十月号に書いている。
双竜環頭は、刀の握る部分の端が環状になっており、輪の中に向かい合って玉をくわえる二つの竜の装飾がある。新納教授は「現地でまだ土がついたままの資料を見せてもらい、胸がおどりました」と回想する。
国の重要文化財に指定された双竜環頭もあり、とても珍しい。記者時代、発見の報に現地へ駆けつけたのを覚えている。浮き彫りは精巧で、一部が金色に光っていた。興奮した。
喜ぶのには理由があって、二子塚古墳は壊れかねない状態にあったからだ。墳丘を縦断する形で市道が造られトラックが走っていた。住民や考古学愛好家らが実態を福山市教委などに訴えて保存へ向けて調査が実現した。放置されていたらどうなっていたか。
築造は六世紀末から七世紀初めで、全長は七十三メートルある。長大な石室構造、西日本では最後の前方後円墳とみられることなど、大和政権の強い支援を受けた首長の墓であった可能性が強い。
今年、市教委の保存整備指導委員会は、学術的価値が高いと評価し、国史跡指定に向けて動き始めた。現在、市教委が遺跡の整備計画を立てている段階だ。郷土の貴重な遺産として生かしてほしい。