福田康夫首相(自民党総裁)と民主党の小沢一郎代表との初めての党首会談が三十日、国会内で行われた。
首相は、海上自衛隊によるインド洋での給油活動継続に対する米国はじめ各国の期待を踏まえ、新しいテロ対策特別措置法案について「内外の理由から何とか成立に協力してほしい」と要請した。
これに対し小沢氏は、「自衛隊の海外派遣はきちんとした原則、すなわち国連の活動の枠内でしか許されない」と従来通りの主張を述べ、協力を拒否した。
党首会談は前日の夕方、急きょ開催が決まった。衆参で与野党の勢力が逆転した「ねじれ国会」で政治がこう着状況にある中、首相側が「新特措法案はじめ国益に関する事項で話し合いたい」と申し入れ、小沢氏も「党首として国益を考えている」と応じて実現した。反対姿勢が強固だった小沢氏が応じたことで、新しい局面が開けるのかと注目されたが、結果的には肩透かしに終わった。
しかし、両党首は今週末に再び会談することになった。双方が対立から話し合い路線の模索を始めたとも思えるが決着の見通しは不透明だ。
三十日の会談は冒頭両党の幹事長、国対委員長が同席したものの、その後二人だけで行われた。何か表面に出ていない内密の協議があったのでは、と勘ぐりたくなる。
民主党は夏の参院選勝利以来、従来型の政治手法を批判してきた。今月初めの与野党国対委員長会談で、与党側が新特措法案に関して提出前の協議を呼び掛けた際は「国会の公の場で議論すべきだ」として拒否した。小沢氏自身も八月、給油活動継続へ特措法の延長に同意を求めて訪れたシーファー駐日米大使との会談を、自らの意思で報道陣に公開している。
なぜ、今回の党首会談は公開の場で行わなかったのか。原理、原則的主張を強めていた小沢氏の言動に反する。隠密行動を好み、説明不足が指摘された昔の小沢流の復活を思わせる。
もし、非公開のままの党首会談で物事が進むなら、国民は蚊帳の外に置かれ、現在行われている衆院テロ防止特別委員会での審議も空しいものになる。
党首会談に伴い、両党は三十一日に予定していた国会での党首討論を十一月七日に延期することで大筋合意した。だが、海自の給油活動は一日に停止してしまう。国際的に評価されている活動をやめ、そのまま何もしなくていいのか。密室でなく党首討論の実施を早め、国際貢献の在り方を堂々と議論すべきである。
米政府はイラン指導部の親衛隊的性格を持つ軍事組織「イラン革命防衛隊」を大量破壊兵器の拡散組織に指定し新たな制裁措置を科すと発表した。
米国が主権国家の軍隊に制裁を科すのは初めてで、イランにとっては政治的、経済的に大きなダメージとなろう。二国間の緊張が一層高まることが懸念される。
制裁は革命防衛隊が所有・管理する十五以上の組織や個人、イラン防衛産業を支配する国際軍需省、メリ銀行などの国営銀行も対象にした。在米資産は凍結され、米企業・個人との取引も禁じられる。一九七九年のテヘランでの米大使館人質事件以来、最も厳しく広範囲の制裁となる。
核開発を継続しイラク安定化をも脅かすイランに強い警告を発すると同時に、中国、ロシアの消極姿勢から追加制裁実現のめどが立たない国連などに対し早期の行動を促す狙いがあるのだろう。
現状の国連制裁は核やミサイル関係の取引規制が中心でイラン経済への直接的影響は軽微とされる。今回、アハマディネジャド大統領の権力の源泉といえる革命防衛隊を狙い撃ちにしたことで、イランの国際社会でのイメージは悪化、孤立化が進もう。国営銀行を標的にした締め付けにより多くのイラン企業が輸出代金の回収ができなくなるなど窮地に追い込まれそうだ。
イランはウラン濃縮停止を求める国連決議を順守すべきだ。ただ、守らないからと一方的な制裁強化にも批判があり、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長もイランを追い込むほど「核開発に進みかねず、中東地域の破滅につながる」と警告している。米国には国際会議の場で直接交渉を行うなど外交努力の継続を求めたい。
(2007年10月31日掲載)