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【主張】国旗・国歌 問題教員の報告は必要だ
神奈川県教育委員会が国歌斉唱時に起立しなかった教員名を校長に報告させていたことについて、同県個人情報保護審査会は「思想・信条に関する個人情報の収集に当たる」として、報告を中止させるよう答申した。教育現場の実情を無視した答申である。
学習指導要領は「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めている。また、平成11年に成立した国旗国歌法は「国旗は、日章旗(日の丸)とする。国歌は、君が代とする」と規定している。国歌斉唱時に起立して歌うのは国際常識である。
県教委が国旗・国歌の適切な指導を行うためには、これらの法令を順守しなかった教員名を当然、把握しておかねばならない。教員の人事異動や学校評価のためにも、不適格な教員名の報告が必要になろう。
だが、審査会は「起立しない理由の多くは過去に日の丸・君が代が果たしてきた役割に対する否定的評価に基づく」「不起立は一定の思想信条に基づく行為と推定できる」として、保護されるべき個人情報に当たるとした。
この考え方は、教育現場では通用しない。個々の教員がどんな思想・信条を持っていたとしても、学校では、児童生徒に国旗・国歌の適切な指導を行う義務を負っている。それが公教育というものだ。
審査会の答申について、梶田叡一・兵庫教育大学長も「教員に思想信条の自由はあるが、公教育では国旗国歌の尊重が求められている。行政が法令順守を確認するのは当然で、個人情報保護とは別問題だ」と言っている。これが学校現場での正しい考え方だ。
国旗と国歌には、それぞれの国の歴史が込められている。日の丸は江戸時代から外国船と間違われないための船印として使われ、君が代は和漢朗詠集などの歌から作詞された由来を持っている。日本の子供たちが将来、国際社会で活躍するには、自国の国旗・国歌に誇りを持ち、外国の国旗・国歌にも敬意を払う心を養うことが大事だ。
教育委員会や校長らは今回の答申に左右されず、問題教員の実態を正確に把握したうえで、毅然(きぜん)とした国旗・国歌の指導を続けるべきである。