【明解要解】「亀田寄り」TBSの実況に抗議殺到
2007年10月31日(水)03:31
■問われるスポーツ報道の姿勢
TBSが放送したWBC世界フライ級タイトルマッチの“激震”が、なおも続いている。王者・内藤大助選手に対し、挑戦者の亀田大毅選手は反則を繰り返し、1年間試合禁止という厳罰を受けた。が、試合中、TBSは目に余る「亀田選手寄り」の実況を展開。視聴者から抗議が殺到した。TBSはその後、謝罪したが視聴率優先のバランスを欠いたスポーツ報道が問われている。(文化部 戸津井康之)
「チャンピオン(内藤選手)が時間稼ぎをしています」。試合中、両選手がクリンチする度にアナウンサーはこう実況した。が、主審に見えない位置で亀田選手の腕が内藤選手の頭や首を絞め上げている映像がテレビ画面では流れていた。
瞬間最高視聴率は関西地区で40・9%、関東37・5%(ビデオリサーチ調べ)。人気競技のプロ野球でも高視聴率が取れない昨今のスポーツ中継にあり、驚異的な数字を記録したが、あまりに偏った放送内容や試合開始までの前置きの長さに、TBSには視聴者から約1500件の抗議が殺到した。
翌日からTBSは報道番組などの中で、この放送を検証し謝罪したが、テレビ朝日の君和田正夫社長は中継に対し「ボクシングをスポーツとして扱うのか、イベントとして扱うのか。TBSのスタンスを疑う。放送局は競技者に敬意を払うべきだ」と苦言を呈した。
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試合が行われた10月11日、TBSは午後6時55分から約2時間、中継を続けた。「亀田選手のこれまでの対戦相手は戦績もあいまいな外国人選手ばかりで、その実力は未知数」と指摘するボクシング関係者は少なくなかった。今回も「実績豊富な内藤選手への挑戦は時期尚早」と言われながらも、TBSは「最年少記録達成か」と前評判をあおり、ゴールデンタイムで放送を組んだ。
TBSに抗議が殺到したのは、「反則」問題だけでなく、“無謀なマッチメーク”や過剰なショーアップなど、「視聴率さえ取れればいい」というスポーツ報道の姿勢にも一因があったことは間違いない。
テレビ東京の島田昌幸社長は「視聴率的には成功でしょうが、スポーツを育てること、フェアな戦いを視聴者に届けることはテレビの役割。スポーツを“ショー”にしてはいけない。こんな放送ではボクシングファンが逃げていく」と厳しく指摘した。
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内藤選手にとって今回は初防衛戦。タイの王者ポンサクレック選手からタイトルを奪取したのは7月18日だが、NHKとTBSなど民放キー5局はこの日、試合を放送せず、唯一、放映権獲得に手を挙げたのはU局の東京MX(東京メトロポリタンテレビ)。同局にとって世界タイトル戦の生中継は12年前の開局以来初だった。
飛田隆一スポーツ部長は「どこの局も放送しないならやろうと決めた。負けたら引退という背水の陣でポンサクレック選手に挑む内藤選手。名勝負になると判断した。タイトル奪取の瞬間を中継できた経験は局にとっても意義があり、当日の視聴者の反響も大きかった」と話す。
TBSで放映した11日の初防衛戦後、東京MXには「内藤選手がタイトルを奪取した試合を再放送してほしい」と要望する投書や電話が殺到したという。TBSへの抗議とは対照的な反響は「視聴者が放送局に何を求めているのか」に対する一つの答えを示したといえる。今後の試合中継の放送体制などについてTBS広報部は「まだ、未定」としている。
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