昨年8月に奈良県で緊急搬送先探しが難航し妊婦が死亡した問題を受け、京都府は31日、近畿2府7県間で周産期(妊娠22週−生後1週間)の妊婦搬送を調整する際に府の拠点となる病院に、京都市東山区の京都第一赤十字病院を指定した。府と他府県との患者搬送のやりとりは同病院が一元的に対応し、スムーズな受け入れ病院探しにつなげる。
奈良県の問題では、県内で搬送先が見つからず大阪府へ協力を依頼する際、複数のルートで病院探しが行われたという。このため、昨年の2府7県知事による会談で、効率的に連携することで合意していた。
同赤十字病院は、府内で妊婦の搬送先を調整する府総合周産期母子医療センターとしての実績もあるため拠点病院に選ばれた。近畿での広域搬送調整拠点病院は、既に滋賀県と兵庫県を除く2府5県で決まっている。
府によると、同病院を通じて母体を府外搬送した例は05年度で5件(大阪4、滋賀1)、06年度16件(大阪15、滋賀1)。府外からの受け入れは05年度1件(滋賀)、06年度6件(大阪3、奈良、福井、滋賀各1)。ただ、ほかに救急や病院が独自に府境を超えてやりとりする例もあり、「正確な全体数は分からない」という。
京都府総合周産期母子医療センター長の中田好則医師は「拠点病院として位置づけが明確化し、他府県と連携しやすくなる。しかし本来必要のない人からの連絡が増えると、当直医は1人のため電話対応ができなくなることも心配。事前によく地元のかかりつけ医や病院を通じて対応することが重要」と話している。
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