中部電力浜岡原発の運転差し止め請求訴訟で、静岡地裁が26日、言い渡した判決の要旨は次の通り。
【主張立証責任】
主張立証責任は原告の住民側にあるが、原子炉施設の安全設計、安全管理などの資料の大部分を中部電力が保有し、企業秘密などの制約から住民側が資料を入手することが困難なことなどから、まず中部電側が原子炉等規制法などの規制に従い設置運転していると主張立証する必要がある。それを果たさないときには具体的危険性の存在を推認するのが相当だ。これを中部電側が立証したときは、原則通り、住民側が国の諸規制では安全性が確保されないことを主張立証すべきだ。
【求められる安全性】 原子炉施設には地震、故障など異常時の事故でも一般公衆の安全確保が要求される。
【基準適合性】
本件原子炉施設の設置、設計および運転は各種の審査基準に適合している。
【本件原子炉施設の安全性】
中部電の安全評価に問題はない。設計用最強地震として安政東海地震(M8・4)など、設計用限界地震としてM8・5の地震などが選定され、十分安全側に立った想定がされている。想定東海地震と東南海地震・南海地震との連動についても、安政東海地震を上回らないことが確認されている。
想定東海地震に関する中央防災会議のモデルは十分な科学的根拠に基づいており、同モデルより震源断層面の深さをより浅く、破壊開始点を本件原子炉施設により影響を与える地点に想定、アスペリティが本件原子炉施設の直下に存在するとして、想定東海地震を考えなければならないとする住民側主張は採用できない。
【改定指針】
改定指針は地震学上の新たな知見を踏まえ、さらなる耐震安全性の向上の見地から改定指針の基準地震動Ssでの耐震安全性の確認を求めたものであり、旧指針に基づく安全評価を否定するものではない。
【本件原子炉施設の耐震安全性】
基準地震動S1、S2の策定手法に不合理な点は認められず、妥当なものと評価できる。中央防災会議のモデルに基づく地震動の応答値は基準地震動S1、S2による値を十分下回っており、設計上の安全余裕は十分に確保されている。
本件原子炉施設は、想定東海地震の地震動だけでなく、想定東海地震と東南海地震・南海地震とが連動した場合の地震動にも耐震安全性が確保されていると認められる。
【地盤】
本件原子炉施設の地盤は堅固であり、原子炉敷設内に存在するH断層系は既に固結していると認められる。地震発生時に本件原子炉施設の安全性に影響を及ぼすような地盤の変状を生じることは考えられない。
【SCC】
SCC発生のメカニズムの解明は相当程度進んでおり、設備・機器の健全性を確認しつつ、引き続き運転を続け、あるいは適宜交換するという方法は合理的である。本件原子炉施設では、点検・検査によってSCCの発生を捕捉できる体制が整っており、本件原子炉施設の耐震安全性に影響はないと認められる。
【配管の減肉減少、疲労、中性子照射脆化】
これらの経年変化事象に対しては、その発生・進展を抑制する対策が講じられており、中部電の点検、管理体制も適切に構築されていることから、原子炉施設の安全性に影響はなく、耐震安全性にも影響がない。
【結論】
よって、本件原子炉施設の運転によって、住民らの生命、身体が侵害される具体的危険があるとは認められない。